2回目となるクローズアップ。

今回は、東京におけるヴィンテージギターショップの草分け的な存在ともいえるBlue−G(ブルージー)で、店長の島居(しますえ)さんからお話を伺いました。

店はHodo’sの斜め向い、2階がスパゲティ屋さんのビルの5階にあるのですが、
ここも、表の看板は大変小さく、見逃してしまうかもしれません。

現在の広い店舗に移転して、海外の個人ルシアー(ギター製作家)のギターを幅広く扱っていますので、そんな情報を含めてお聞きしました。


■Blue−Gの設立経緯からお願いします・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今年で丸6年ですので、1998年からやっています。私は元々楽器業界でして、最初はエレキから入りました。その後職を転々としていた時期を経て、楽器屋に戻ったのが27歳の頃です。この店をやる前は大阪のウェーバーで仕入れと販売を担当していました。その頃は東京にヴィンテージショップがあまりなく、大阪のお客さんの多くが東京の方で、お客さんからも楽器店を出したらといわれていたのですが、ウェーバー自体は東京に出すつもりがなかったものですから、自分で店を出しました。

最初は一人で始めたのですが、今では、修理担当の石田と山口、販売が関口と私、それに事務の人とアメリカに1人いますので、6名になりました。


  
■店作りの方向性はどういうものですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
基本的には、他に置いてないものを扱いたいと思っています。マーチンやギブソンならカスタムの面白いものを企画したいですし、個性ある個人製作家(ルシアー)のものを扱いたいですね。

ルシアーは、主にアメリカで見つけてくるのですが、個人よりちょっと大きなマニュファクチャーメイドレベルの人のギターを扱うとなると、年間に何十本という契約が必要になります。すると、この店だけで扱うのはちょっと難しくて、卸しをしなければならないのですが、ギターは自分の目の届くところで販売するという方針ですので、卸しの必要のない、少ない数でも契約できる個人ルシーアが中心になっています。

最近では、アメリカのショップで売っている価格がリアルタイムで入ってきますが、実際には、同じレベルにするのはかなり難しいです。個人輸入と違って、ギターを実際に弾いて選べて、アフター保証もついた状態で、お客さんに納得して買ってもらえるような価格を目指しています。

かつて、個人製作家のギターが、現地でのドル価格と比べてベラボウに高く、「なんでこんなに高いの」と言われるような時期もありましたが、現地の情報が簡単に入る今では、販売するお店が、作る人と直接コンタクトをとって、その中でできるだけいい値段で売るということが必要ですね。

現在、当店で扱っているルシアーは14〜5人いるのですが、皆さん年間に数本しか作れない方ばかりで、日本の他で扱いたいといっても作れませんし、当店で十分販売できるだけの数さえ入ってこないという状況です。
  
 
■ギターの売れ筋として、最近、何か変化はありますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

当店が方向性を持って仕入れているせいもあるとは思いますが、60年代や70年代のギターと比較すると、個人製作家の新品のほうが弾きやすいという人が増えているように思います。

ヴィンテージだと、30年代もののように、ルシアーがどんなにがんばっても簡単に追いつかない音のギターは売れていますが、50年代や60年代のマーチンが全体に減ってきて、メリルとかジュリアスボージャスのような30年代のヴィンテージをコピーしたルシアーものが売れてきています。

最近は、フィンガースタイルで演奏する方が圧倒的と言って良いほど増えてきているのですが、DADGADなどの変則チューニングで弾いて良い音となると、マーチンじゃ苦しいですから、ルシアーものになってしまいます。全体に、フラットピッキングよりもフィンガーピッキング向きの楽器が増えていますね。

   
■アメリカでの中古楽器の状況はどうですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アメリカではギターの価格が確実に上がってきてますね。当店はアメリカ大手の有名な扱い店から買う方法じゃなく、そこに卸そうとしている個人のディーラーなどから情報をもらって買ってます。

アメリカの個人ディーラで当店で扱いたいギターを持っている方を何人か知っているのですが、「こういうギターが入ったら連絡を欲しい」と、普段から連絡を密にとりあうようにしており、ギターショーがある場合は、出品前に押えるようにしています。そうでもしないと、変わったものやレアなものは手に入らないですね。

あと、個人の方から買うという方法もありますが、アメリカでは「eBey」などのネットオークションが無茶苦茶の状況になっていまして、非常に危ないです。当店のホームページのギターの写真が勝手に使われていたり、「落札される前にお前に売ってやるから代金を振り込め」といって、先にお金だけをとってそのままトンズラする。昔はそんなことはなかったのですが、ここ1年くらいの間でそういう詐欺が多発しており、どうしようもない状態です。

これだけ情報があふれていると、おいしいギターがおいしい値段で買えるという状況ではありませんので、皆さんも充分に気をつけてください。

 
■アメリカからどの位のギターを扱っているのですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

個人製作家のものだけで100本くらい。ヴィンテージも合わせると、300本以上は輸入していると思います。輸入の際、ブラジリアンローズなんかはCITES(サイテス)と呼ばれる輸出入許可が必要なのですが、アメリカに住んでる人がいないと、なかなか輸出許可が出ないものですから、そのためにアメリカにスタッフがいます。アメリカで年間何十本という枠をとっていて、常に更新してます。アメリカを出荷する前に輸出許可をとった後、日本で輸入許可を申請します。

許可に必要な期間については、最近ちょっと早くなっているようです。ここ数ヶ月前からなのですが、今まで1ヶ月かかっていたものが1〜2週間でCITESがおりる場合もあります。

ブラジリアンを使ったギターでもヴィンテージものはいいのですが、最近製作されたギターに関しては、いつ伐採された木材なのかという証明をつけないとダメですので、ルシアー自身が、木材を買うときに、何年伐採のものかという証明をもらっています。今後、ワシントン条約以降に作られたギターが増えてきますので、一般の人には難しくなるかも知れませんね。

一般の方がアメリカの楽器店やショーなどで直接買った場合、その場ではCITESがとれませんし、また、アメリカの店でもCITESをつけてくれるところが少なくなっていますので事前に確認したほうが良いでしょう。アメリカの輸出許可がとれないと、日本で輸入許可をとってもダメですから、楽器店からはなかなか買いづらいでしょう。当店は、ニューヨークのスタッフが新たにそのギターに対してCITESを取り直すのですけど、きちんとやろうと思ったら、現地にスタッフがいないと難しい状況になってます。

 
マホガニーが制限されるという話もあるようですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マホガニーとかコアとかは常に言われてますね。マホガニーはネックなどに相当使われていますので、制限されるとすべてのギターにCITESをとらないとだめになってしまいますので、手間が大変になりますね。
   
CITES(サイテス)とは

正式には「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」
(絶滅の恐れのある野生動植物の国際取り引きに関する条約)

ワシントン条約として知られており、1973年にワシントンで採択され1975年7月発効された。
取り引きの規制を受ける動植物は付属書1〜 3に記載され、日本は、1980年に加入し、1993年には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を施行している。
ハカランダは、条約適用前に伐採されたものに限り、輸出国と輸入国、両方の許可を得て初めて輸出入が可能であり、条約施行後のものに関しては商業取引が全面的に禁止となっている。

■委託販売についてお話願えますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

当店では、売れるまで責任を持つということでお預かりしてますが、基本的に、委託販売というのは仲介業務ですので、「一般的な相場ではこのくらいですよ」とお勧めはしても、極端に高い価格をつけない限りは値段もお客さんの要望に沿ったもので売るようにしています。

価格設定にあたっては、まず、手取額をご相談させて頂き、そこに20%の手数料(ギターの値段によって多少変わりますが)を加えた金額からスタートするようにしています。販売時に値引きが入ったとしても当店の手数料の中から引いていきますので、最初に取り決めした価格は変わらずお渡ししています。また販売しやすいように、ギターをお預かりした時点でネックが反ってたり、力木がはがれたりしている場合でも無料で修理しています。

手数料をすごく安く受けるところもありますが、あとから修理代とかを請求されることもあるようなので、事前に確認したほうがいいですね。

  
■中古の価格設定に「音の良さ」は反映させますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

確かに音は大事な要素なのですが、その音を良いと感じるか、悪いと感じるかは個人差があるので難しい部分です。査定の中では、音の良さよりも、傷がないとか、オリジナル性が高いとかがポイントになります。

お客さんが音に強い思い入れがあって、高く売りたいという場合は、値段が当店の考えている幅の中であれば、その点を重要視して売っていきますが、実際には難しいですね。

 
■注目しているルシアーを教えてください・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

WOODBRIDGE
マーチン系のヴィンテージギターをリメイクしているルシアーが何人かいまして、当店で扱っている中では、ジム・メリル(MERRILL)という30年代のマーチンを忠実に作っているルシアーがいます。既に名前も知れ渡ってきましたが、本当に太い音が出ます。最近ではヴィンテージのリメイクだけじゃなく、ウッドブリッジというフィンガー系の新しいモデルも作っており、いろんなミュージシャンが使っています。

あとは、ジュリアスボージャス(JULIUS BORGES)。この人のギターも素晴らしいです。OM45のデラックスという高いギターがあったのですが、すごい音で、すぐに売れてしまいました。

30年代にマーチンが新品で発売された当時の音と、今の新品のマーチンの音というのは必ずズレがあると思うのですが、彼らは何十年も経って変化したヴィンテージの音を再現するというよりは「1934年に発売されたときはこんな音だった」というイメージで作ってるんです。

当然、新品で枯れた音を出すというのは難しいのですが、当時のいい音というのが最初から出てきて、ちょっと弾きこめば結構枯れた感じにもなってくるんです。

その音作りのポイントについて彼らに聞いたこともあるのですが、どこで音を作るのかというのは絶対に教えてくれません。ジュリアスでもかなり変わったことをやっているようなのですが、「こうしてる」とは絶対に言わない。
ブレイシングの構造やトップの厚みなんかは目で見たり、計測したりすれば分かりますが、それ以外の部分で、例えば接着にニカワのどういうものを使っているとか、塗装に何を使っているとか、そういう目に見えない部分はわからないですね。

  
■フィンガー系ギターのルシアーではどういう方に注目していますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

Marc Maingard

Sergei de Jonge

Mario Beauregard

まず、マークマインガード(Marc Maingard)。南アフリカの人でサンタクルーズとかダキストのところで勉強した結構ベテランの人です、彼のギターは非常にきれいだし、作りもすごく丁寧でいいです。フィンガーだけじゃなくてストロークのときのバランスもいいんで、フィンガーピッカーだけじゃなくていろんな人に使われるギターですね。

カナダで、元々クラシックギターを作っていたサーゲーディヤング(Sergei de Jonge)。この人もベテランで、彼のギターは中域の音がものすごく太く、マーチンとは違っていいクラシックを弾いているような音を出してきます。

あとは、ソモギのところにいた、マリオボーラガー(Mario Beauregard)。ソモギの一番の後継者という方で、デザイン的にもソモギそっくりなんですが、いまだにソモギからいろいろ教えてもらってやってる。ソモギのギターはとんでもない値段までいってしまったので、これからは、彼のギターがどんどん出てくるかなと思います。

現在、10数人のルシアーとお付き合いがあるのですが、いいギターを探すために、今までに100人以上のルシアーの作品を見ています。その中から、音的にちょっとつらいかなとか、レベルが不安定だとか、納期があまりにも遅いとかの要素を考えながら選ぶのですが、ギター作りの技術に関しては、ルシアー同士の見方が一番参考になりますので、彼らが注目している方が誰なのかということを直接聞きながら選ぶようにしています。

 
■価格的にはどうなんでしょう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

メリルの場合、当店のために年間15本くらいは作れると思うのですが、ほかの人は10本とか5本とか少数しか作れませんので、どうしても1本の単価は高くなってしまいます。メリルで50万円代後半から、サーゲーディヤングで60万円代、マークマインガードやマリオボーラガーになると80万円位からになってしまいます。

ハカランダの価格帯からすると、ローズで何でこんなに高いのと思いがちなのですが、個人製作家の場合、ハカランダで作るのもローズで作るのも手間は同じですから、木材の値段の違いだけになってしまいます。作っている手間と時間は全く同じだということを考えていただければありがたいですね。

  
■ギター選びのポイントなどはありますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
個人ルシアーの皆さんは、完成度が非常に高いレベルにありますので、どれが良い悪いということではなく、「どの音が好きか」ということだけになります。

店に来ていただいて実際に弾いてもらうのが一番なのですが、来れない場合は、「どんな音がほしい」ということを具体的に言っていただければありがたいです。確かに、自分の好きな音を言葉で表現するのは難しいのですが、何でも結構ですので、ヒントを教えてもらいたいですね。

ただ、そのとき好きでも後で嫌いになることもありますので、なかなかギター選びは難しいですよね。

海外の個人製作家のギターは価格も安定してます。新しいマーチンを中古で販売するとなると半額くらいになってしまいますが、個人ルシアーのものだと、20〜30%は下がっても半額になるということはまずありません。

あと、当店でしか扱ってないギターを手放す時に、申し訳ないと思っていただけるのか、他の店に委託を出す方も多いのですが、そのギターについては個性をよくわかってますので、元の音に調整できますし、値段を安くたたくようなこともできませんので(笑)、ぜひ遠慮なく当店にお持ちいただければと思います。

  
2004年4月24日
トップページへ>>