このレポートは2004年に掲載したものですが、その後、お店は元の場所から5分程度の場所に移ると共に、オーナーであった奥山さんは地元の札幌に帰って、ギターショップを始めました。


現在のHobo'sは ⇒ http://www.hobos-g.com/

まずは、お店の簡単なご紹介からお願いします・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この店は、2000年6月に始めましたので、もうすぐ丸4年になります。店のスタッフは、私と、リペア担当の岡と、営業担当の成澤の3人でやってます。
ここのようなギターショップの経営者の場合、以前、どこかの大手楽器店にいて独立したタイプと、趣味の延長でショップを始めてしまったタイプの2つのタイプがあるのですが、私は後者のタイプで、元々は医療関係の仕事をしていました。楽器店から独立した方は楽器を「売る側」の立場しか経験されていないのですが、私は、まだ「ユーザー側」の気持ちが分かるほうかなと思っています。


  
ショップを経営するにあたって、「こんな店にしたい」という方向性はありますか・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
最初はありました。御茶ノ水にはギターショップがたくさんありますし、ギブソンを主に扱う店とマーチンが豊富な店が近所にありますので、その隙間を埋めたいと思い、いろいろ悩みました。しかし、実際にやってみると、ユーザーのニーズとギターの流通量の関係で、どうしても似てしまいますね。

その中でも、このショップはコリングス(COLLINGS)ギターについては日本でも多く販売しているほうですし、テリーズテリー(Terry's Terry)やカオルギター、そして、最近ではトニー・ヴァインズ(TONY VINES)なんかを扱って特色を出すようにしています。
  
 
テリーズテリーのギターはそんなに見たことがないのですが、扱ってるのですか・・・・・・・・・・・・・・・・

テリーさんとの共同企画で、スターブルー(Star Blue)の販売をやってます。ただ、本数が少なく、入荷するとすぐに売れてしまいますので、店頭で在庫を見ることは少ないかも知れませんね。

マーチンとかの場合、黒澤経由で仕入れている石橋さんなんかでも7掛から8掛で売ってますので、仕入れ価格は想像できると思うのですが、テリーを始めとして、個人製作家のギターは掛け率が高いんです。そんなギターを店頭で豊富に在庫するためには、ショップに余程の体力がない限り難しいですから、どうしても、扱っている店は少なくなってしまいます。

私自身は、もともとユーザーですので、ギターを商品として見る前に、「こんなギターを弾いてみたいな」という感覚を大切にして、いろんなギターを扱ってみたいと思ってます。

  
今まで扱ってきたギターのなかで、「これは凄いな!」と思ったギターを教えてください・・・・・・・・・・・・

そうですね…商売でやってると、印象は意外と忘れてしまうんですよね。

たまに「奥山さんは好きなことを仕事にできていいですね」と言われるのですが、好きなことは仕事にしないほうがいいかも知れません。確かに、いつも好きなギターに囲まれて恵まれているとは思いますが、ギターを見ると「これいくらで売れるかな」と考えてしまういやらしい自分が見えてくるのが嫌なんです。この仕事をやってなければ、今ごろは戦うオヤジの応援団のメンバーになってますよ。でも、この仕事をやってると皆さんと立場が違ってしまうので、どうしても躊躇してしまいます。ギターを楽しめなくなった自分を見てると、得してるのか、損してるのか、難しいですね。こういう感覚は、もともと楽器屋だった方にはわからないことかも知れませんが。

印象に残ってるギターの話だったですよね(笑)。ときどき、自分でも欲しいなと思うギターはあります。最近では、何本か扱った68年のD−45のうちの1本が良かったですね。あとは、D−18S、それに、コリングスのツリーオブライフでしょうか。凄いなと思うギターはいっぱいあるんですが、この仕事をしてると、どんなギターでも良いところを見つけないとだめなものですから、あまり感じなくなってきているかも知れません。

 
奥山さん個人としては、どんなギターが好きですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※写真を撮られるのは好きじゃないということ
  で、横顔だけを撮らせていただきました。


最近はマホガニー系が好きですね。

誰かが「マホガニーは年寄りのギターだ」と言ってましたが、何十年もいろんなギターを弾いてきても、結局はマホガニーに戻ってしまうみたいです。不思議ですよね。何となく、一番癒される気がします。しかし、マホは見た目がチープでラワン系のベニヤっぽく見えて、高級感が感じられないので損をしていると思いませんか。ヨーロッパなんかでは、マホガニーで出来たダイニングテーブルとかの家具は高級品なんですけど、ギターになると違ってしまう。

私は、最初にマーチン社がD−18とD−28で値段の差をつけたのが良くないと思ってます。そもそも音分けのために材料を変えてるのですから、18が安いギターということじゃなくて、28とは別のカテゴリーのギターだという認識が必要なのですが、日本にマーチンが入ってきて、マホは廉価版のギターというイメージになってしまい、本来は優秀な材料なのに不当な扱いを受けているように思います。

ギターが好きな方の中には、女の子に「真帆(まほ)」という名前を付けたり、男の子に「弦(げん)」という名前を付ける方もいますよね。子どもは名前の由来を知ったらショックかもしれませんが(笑)。

 
ギターを選ぶポイントについて何かアドバイスをいただけますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本来、どんなギターがいいと感じるかは、十人十色だと思うのですが、ギターの予備知識は豊富に持っていても、自分がどんな音を求めているのか、方向性が明確でない方が多いように思います。

試奏するときは、ギターで何をしたいのかを決めておいてもらえるとありがたいですね。オールマイティのギターなんてないですから、インストをやるのであればローコードだけを弾いて判断しないで、ハイポジまで音が変わらずに出るかチェックして欲しいし、ストローク主体であれば、思いっきりストロークをしてみて欲しい。自分の好きなアーチストが使っているからという買い方もありますが、弾いて何を確かめたいのか、ポイントを決めておくことが大切です。私個人としては、ローポジションとハイポジションで全く違う楽器のような音が出るギターはあまり評価してませんので、そういう点が気になります。

例えば、そこにあるフランクリンはいいギターだと言われてますが、カントリーブルースをローポジションで弾くと、音の分離が良くて、混じり合わない良さがあります。ステファングロスマンが好きな方には最高でしょうね。
また、シダートップのハカランダのギターとなると、ローコードではそんなに良さは目立たないのですが、ハイポジションになると、凄い音色が出ます。

ただ、音楽のジャンルによって合うギターというのは先入観で刷り込まれているということはあると思います。ブルースにはどんなギターが合うかというと、一般的には、チープなギターの音が合うと言われますね。それは、昔のブルースマンが貧しくてチープなギターしか買えなくて、その当時の音源を聞いているうちに、そういうイメージが出来上がったのだと思います。

D−45とか28じゃブルースはやれないというのが定説ですが、当時のプレイヤーでも、羽振りが良ければ、「マーチンを買いたいな…」と思ったはずですよね。もしかすると、D−45なんか使ってればその音がブルースの音になっていたかも知れません(笑)。

それと、Dタイプはフィンガーピッキングに向かないと思っている方が多いようですが、本来、ドレッドノートは優れた楽器で、何でもできる楽器だと思います。ただ、大排気量のスポーツカーと同じで、上手でないとコントロールが難しいかも知れませんが。

 
中古ギターに関するアドバイスをお願いします・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リペアを担当している岡さん。
  笑顔が優しい好青年です。

 

中古品というと、メンテナンスが不安だとか、壊れやすいとか誤解している方が多いように思います。

自動車のように消耗品の部品でできた工業製品と違い、ギターは古いもののほうが丈夫です。新しいギターは木材が安定していないためにネックが動いたり、大量生産によるシーズニング不足でブリッジの浮きとかのトラブルがでます。例えば、アメリカの個人製作家が限られた数を丁寧に作り、現地でベストの調整が行われているギターだとしても、日本に送ってもらうと気候の違いから木が動いてしまい、調整しないと音がビビって使えないというケースもあります。

一方で、古いギターはもう安定していますので調整の必要性はあまりありません。30年前のギターだと、今まで無事だったという実績もあるわけですから、簡単には壊れないですよね。

それと、新品は1年、中古品は半年というように保証期間を設定しているところもあるようですが、中古品の保証に期限を切ってはいけないと思うんです。だいたい、安定しているギターが半年なんかじゃ何もおきません。

私のところでは、買っていただいたギターについては、弦高調整やネックの調整などは店がある限り無料で調整させてもらいます。もちろん、踏んで割ったとか、倒してネックが折れたという修理は無料というわけにはいきませんが(笑)。

 
奥山さんが苦手なお客さんのタイプというのはあります?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

苦手なお客さんですか?(笑)。そうですね、2人、3人とかで一緒に来るお客さんの場合、対応に困ることがあります。こちらが何か言ったときに、友達同士で話したり、耳打ちされると、私が話ししてもいいのかなと迷ってしまうんです。

それと、値段だけを見て「もうちょっと安くならない」といきなり言われると、悲しくなりますね。中古ギターは自動車なんかと違って、1本1本違うわけですし、私自身、状態をちゃんと鑑定して値段をつけているつもりですので、いきなり値切られると、「なんか、文句があるのかな」と思ってしまいます(笑)。ただ、これは都道府県で傾向が違っていて、特に関西の方が値段にシビアです。東北方面の方は、値切ることは少ないですし、クロスとか弦をサービスすると、素直に喜んでもらえる。嬉しいですよね。

最近は円高なんですが、円が安いときでも、いつも1ドル100円で計算する人も困ります。最近はインターネットで海外情報が豊富ですので、「アメリで1500ドルで売っているので、日本円で15万か…、なんでこんなに高いの?」と言われるんです。でも、日本で売るためには、保証料やメンテ料、家賃、人件費、送料、それに利益を入れるとそんな値段で売れるわけがないのですが、分かってもらえない。お客さん自身がいろんなリスクを覚悟で個人輸入する代わりに、我々がそれらのリスクを引き受けているということを理解してもらえばありがたいですね。

それと、電話での問い合わせで、実際にギターを見ても弾いてもいないのに「もっと安くならないか」とよく聞かれます。ギターは値段だけじゃないはずなのですが、まずは値段で判断する方が多いのが現状ですね。もしかすると、今では、ギターに関する個人のインターネットサイトが多いですから、そこで自慢したり、優越感を感じたりするために、ギターを「買うこと」が目的になっている人もいるのかも知れません。

 
では、逆に好きなお客さんというと?ギターをたくさん買ってくれる方を除いて(笑)・・・・・・・・・・・・・・

話しを聞いてくれるお客さんが好きです。ギターを弾く方は、どちらかというと内向的な方が多いように思うのですが、声をかけられたいのか、放っておいて欲しいのか、なかなかわからないんです。そんな時は様子を見ていて好みを想像するようにしています。ブティックで洋服を勧める時と同じで、あれこれお客の傾向を想像しながらギターを選ばせていただいて、その結果、喜んで買ってもらえるとうれしいですね。

  
お客さんに聞かれて、困ることはありますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

電話で「いい音ですか?」と聞かれるのが一番困ります。

簡単に「いいですよ!」と言ってしまえばいいのでしょうが、まだプレイヤーの意識が残っているためか、言えないですね。正直に「よくないですよ」と言ってしまうこともあります(笑)。どんなギターでも誉められるギター屋さんは、皮肉じゃなくて、本当に偉いなと思います。私は、まだ世間の目が気になって、できないんですよね。「プリウォーのギターは最高ですよ」と言っておきながら「最新のマーチンはいいですよ」とは言えない(笑)。

実は、他の店のホームページのコメントを盗もうかと思ったこともあるのですが、「いつまでも飽きの来ないギターです」と書いているのを見ると、「飽きの来ないギターが、なんで中古で出てるんだ。前の持ち主は飽きているんじゃないか」と思ってしまうんです(笑)。

まさか「売主が飽きたわけじゃなくて、諸事情があって手放すことになりました」とは書けないですから、コメントはあまり書きたくないんです。でも、今後は個性的で、読んで笑ってしまうような面白いコメントを書くようにしてみようかと思ってます。ギターの細かなスペックは本に書いてますし、傷の状態なんかは写真を見ればわかりますからね。

それと、多い質問に「鳴りますか?」というのもあります。これは感覚の問題ですから、禅問答みたいになってしまいます(笑)。マーチンなのにギブソンのような音だとクレームものですが、ギブソンとマーチンでは音作りのコンセプトが違いますから、決してギブソンが「鳴ってない」ということにはならない。

「いい音ですか?」「よく鳴りますか?」これだけじゃ、答えようがありません。何と比べてかということを言っていただかないと。それと、何でも求め過ぎる人が多いかも知れません。きれいで、珍しくて、オリジナルで、よく鳴って、傷が少なく、ケースも良いのがついて、安い…そんな中古ギターはないです!あったら私が欲しい(笑)!

先日、お客さんがギターを試奏していて、「このギターはだめだな」という感想をなにげなく言っていたのですが、実はその時、すぐ横に、そのギターを販売委託されているお客さんが居合わせていまして…。その時は、本当に困ってしまいました(笑)。
委託に出しているお客さんは、時々自分のギターの様子を見にくることがありますので、ご注意ください(笑)。

 
では、最後に、何か言っておきたいことはありますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まだまだいっぱいあるのですが(笑)。

私の店では、基本的に通販で買われるお客様が多いんです。多くは、こちらが説明する言葉だけを聞いて買ってます。でも、フィーリングは触ってみないとわからないですよね。ナット幅が何ミリといってもネックのシェイプで細く感じたり、太く感じたりしますから、実際に触らないとわからない。

「ギターを実際に触って決めたいので、送って欲しい」となかなか言えない人が多いのですが、遠慮なく言って欲しいですね。特に地方の皆さんは簡単に弾き比べられないというハンディを感じていると思いますが、お送りすれば自宅でじっくり弾いて決められますので、そういうハンディも小さくなると思います。どんどん言ってみてください。出来る範囲で対応しますので。

考えてみると、我々の若い頃はマーチンを売っているところなんか、ほとんどなかったですよね。あったとしても、カギのかかったガラスケースに入っていて、弾かせてもらえるのは本当に買おうと思っている人だけだったように思います。ところが、今ではこうして床の上に何本もあるんですから、すごい時代ですよね。せっかく来たのなら、弾かないと損ですよ。買わなくてもいいですから、話のネタにでも、どんどん弾いていって欲しいですね。
 
2004年4月9日
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