神田小川町で、昭和19年に創業したカワセ楽器。マーチンギターを最初に日本で販売し、多くのプロのミュージシャンにギターを提供し続けてきており、我々にとっては「雲の上」の存在だった楽器店かもしれません。そんなカワセ楽器の二代目になるご主人にお話をうかがいました。


■カワセ楽器の歴史からうかがえますか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最初はギターだけではなくいろんな楽器を扱っていたのですが、創業当時に一番流行っていたのはアコーディオンと聞いています。先代はアメリカやヨーロッパに直接買い付けにいっていたのですが、その中で、マーチンに注目した。マーチンギターを扱ったのは、日本で一番早いでしょうね。

その後、ヤマハさんがエージェント(代理店)になり、東海楽器、黒澤楽器へと移っていきました。当店はアメリカから直接仕入れていたのですが、エージェントではありません。最初の頃はエージェントもお客のニーズを反映してなくて、当店で欲しいギターがエージェントになかったものですから、直接アメリカから買い付けてくるものが多かった。当時は1ドル360円の時代で、ギターは贅沢品でゴルフ道具なんかと同じで税金が相当に高かったから、買い付けも大変だったでしょうね。アメリカへ行くというと、水杯を交わして、羽田から出て行った時代です。

先代は先見の明があったというか、これからは音楽、文化の時代だという確信があった。
そんな明確な方向性があったからこれまで楽器店をやり続けられたのかも知れません。当時、マーチンギターはものすごく高価でしたから、音楽文化を広める上でも、皆さんの生活の中に入っていける楽器ということで、MASTERやBILLYなど比較的安いギターも作っていくようになりました。

先代は楽器の販売を単純に金儲けの道具とは考えず、「これで世の中に貢献する」「これでみんなにアピールする」というロマンや生き様、職人気質というものを持ってました。金儲けとはきちんと一線を引いていた。気に入らない人には「他で買ってくれ」とか言って売らなかったし、売った楽器に対して無理難題をふっかけてくるお客には、「あんたが気に入らないのならこの世の中から消してやる」ってガチャン!と目の前で壊したこともあったそうです。そういうことは余程の自信とポリシーがないとできないですよね。今だと、「あ、そうですか」と黙って返品を受け取って、他の人に売るということをしますが、そういうことをしなかった。

その時の光景を目にしたお客さんが、今でもお店に来る度に話してくれます。命日になると必ず花を持ってきてくださるのですが、商売に対する考え方について、先代ともすごく気が合っていたんでしょうね。ただ、その人はどんなにいいマーチンがあっても買わず、MASTERをずっと使ってくれています。「いいお客か悪いお客かわかりませんけどね」なんていいながら、先代やMASTERへの思い入れがあって、「いろんなこと学びましたよ」って言ってくれます。いまだにそういうお付き合いをさせてくれる先代のすごさを感じます。私たちもそういう商売をしていかないとと思うのですが、毎月25日近くになると支払いとかあって、どうしても利潤追求になってしまいがちですよね(笑)。


  
■その頃は、お客さんもプロの方が多かったのですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

プロの皆さんは多かったですね。一般の皆さんにはちょっと敷居が高く感じられていたかも知れません。テレビに映っているプロの人が間近に見られるものですから、店をのぞいて弦を買ってくれるのですが、弦を買うのに2時間くらいいる人もいましたよ(笑)。ギターは先代のポリシーで、当時からガラスケースの中に入っていたのですが、単に保管という意味だけじゃなくて、先代の楽器に対する思い入れがこういうディスプレイにしたのだと思います。私も、外に裸で置いているギターをよく買うなと思うのですが、そういう考え方が他の店とは明らかに違います。そういう面では、一部のお客さんにとっては敷居が高いと思いますが、逆に「なるほど、じゃここで買おう」という方も多かったですね。

創業当時は、ものがない時代ですから、戦後日本に駐留していたアメリカの人たちが帰国するにあたって手放していった楽器を仕入れて、手を入れてきちんと元に戻して売っていくことから始まっています。ですから、直す技術は必然的にが上がっていきました。多くの店では買って売るというだけという中で、当店では必ず手を入れて売っていましたから、スタートから他とは考え方が違っていたのかも知れません。

 
■ギターの修理についてどういう考え方を持っていますか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

修理の基本は「最初のコンディションに戻す」ということです。最初にギターを手にしたとき、「この楽器を弾いていくぞ!」という気持ちがあると思いますが、ぶつけたり、弦を張りっぱなしでネックが反ったり、使って減ったりしたギターを、修理で当時の弾きやすさに戻したとき、思い出も重なって元に戻ると思うのです。そうすれば、また可愛がってくれる。

   
■カワセさんには他にないようなパーツがあると聞いてますが ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

先代はモノを大切にする方でしたから。ここには道具もスペアがいっぱいあるんです。鑿(のみ)一個出てると、その裏側にスペアが3つくらいあるんです。倉庫を空けてみると、今は売っていないようなファンベルトが5本も6本もあったりして「うちは道具屋か?と思いますよ(笑)」。そんな先代のいい道具をずっと長く使っていくというポリシーがしみこんでいます。

よく古いパーツを売っている店がありますが、当店では基本的にはそれはしなかった。もちろんセットで揃っている場合は売ることもありますが、ネジでも当時のオリジナルを使うということはお客さんへのサービスとしてやっています。パーツというのは当店で楽器を買っていただいたお客様へのアフターサービスのためにとっておくものと考えてます。お客さんの楽器を最高の状態で維持できるような体制を絶えず作っておくということですね。

最初は、他で買われたギターの修理は受けなかったのですが、受けるようになった頃も、先代の方針で、当店で買ってもらったものと、他で買ったものの修理代金は3倍くらい違いました。当店のギターにはカワセのシールが貼っているのですが、「このシールが貼ってあると対応が違うと聞いたんですが、シールだけ売ってください」という方もいました。そこまで皆さん愛してくれてるんだなというありがたい気持ちになりますね。当店のお客さんとはお付き合いも長くて、プロになっていった人もいるのですが、プロだからといって特別な扱いはしなかったですね。プロだからといって、値段を引くようなことはしなかったですね。長年のお付き合いの中で弦を1ダースつけたりとか、修理のギターを取りに行ったり配達したりといったアフターサービスはしましたが、値段で差をつけるようなことはしなかった。

先代からは、お客さんに対する「真心」という部分と「金銭のサービス」という部分を違うものとして教えられていますから、値切ることしか考えていないお客さんだと、「うちではそこまでは無理ですから、他で買ってください」になってしまう。お客さんとは長いお付き合いをしていくのが当店の方針です。ギターは売ったら終わりじゃなくて、モノとして長く残っていくものです。お客さんと当店との共通の部分、当店で売った商品がお客さんの手元にあり続ける限り、当店としてはアフターサービスとしてのコミュニケーションが続いていきます。それはお金で換算できないですね。値引きを要求されるお客さんには、他店とのアフターサービスの差をお話して、そこで初めて納得して買っていただいています。多くのお客さんは「ここまでやってくれたよ、ネジもあそこへ行くとあるぜ」という口コミをしてくれるのですが、そういうアフターサービスがあるがゆえに愛してくれているのでしょうね。

 
■修理を検討する際、すぐに修理に出すべきかどうかの判断ポイントはありますか ・・・・・・・・・・・・・・

基本的に、ギターで気になることがあれば、楽器のためだけじゃなくて自分の気持ちの上においても解決してあげてください。そうしないと、弾かなくなってしまいます。私たちの身体で気になることがあれば医者に行くのと一緒で、気になることがあれば気軽に来ていただきたいですね。来やすい雰囲気を作ってない楽器業界の問題もあるのですが、来て、自分の心配を伝えて、自分自身がすっきりすることが大切です。そうしないと弾く気にならなくなってしまう。気になることをそのままにしていると。気持ちが音に影響してきます。せっかくいい音をしていても、「変な音じゃないかな」という思いがいつもあって、プレイにとっても、自分にとっても、楽器にとってもマイナスです。その上で、弾きやすさの部分をチェックして、指摘してもらうのがいいと思います。

修理に出す時期ですが、『割れ』は早いほうがいいですね。木というのは割れるとそこで固まろうとしますから。元に戻りたいのだけど張力があって戻れない状況というのは、ストレスがたまってそこで収まってしまう。早いうちだと、基本的には割れる前の状況に戻れますから。割れた状況を放置してそこに汚れが入ったり、拭いたときにポリッシュなどが入ってしまうと、シリコンや汚れが油膜を作ってしまって、接着できる状況でもできなくなってしまうことがあります。また、割れたところが黒くなっている場合もありますが、それは埃やカビですので、それを取り除くために余分なお金がかかってしまいますので、割れに関しては早く持ってきて欲しいですね。

それに、力木(ブレイシング)のはがれ。裏板や表板のカーブや平面を保っているものが力木ですので、その力木がはがれると、板が暴れ始めて波を打ってしまう。そうなると大事です。はがれた力木の修理は早いに越したことはないですね。はがれはボディを指で叩いてみると音で確認できるのですが、弾いていて音がはじけない感じになります。跳ね返りの音が少なくなって、なんかスッキリしない音になってしまいますので、音としてはすぐわかります。「何なんだろ、湿気かな」とかいいながら持ってくるとはがれていることがよくあります。

 
修理をお願いするときに伝えるべきことは何でしょうか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この部分が気になっている」という気持ちですね。もちろん、私も気づいた点は指摘しますが、はっきり言ってもらったほうがいいですね。「自分はこう思うんだけど、どうですか」と自分が気になって気持ちがモヤモヤしている部分を伝えることが大切です。

ネックの反りについてよく錯覚されることで、「1弦は真っ直ぐなんだけど、6弦が順反りになってる。ねじれてるんじゃないですか」とかおっしゃることがあります。実際には、ねじれてついているように見えるだけなんです。ブリッジもカーブをつけて高音のほうは低くしてありますから、低音のほうは弦高が高くなるわけです。当然、ネックの反り方についても、弦の振幅の関係で低音のほうが順反を強くしています。そういう錯覚をされている場合は、ゲージをあてて、ここがこうなんですと説明すると納得していただけます。許容範囲の感覚というものを話し合って、お客さんに納得してもらって預かるようにすることが重要だと考えています。

  
■悪い修理について聞かせてください ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

修理というのは元に戻すことといいましたが、職人に元の状態に戻す能力がなくて、ブリッジを削ってしまうとか、指板を削ってしまうとかされたことを聞くことがあります。私にいわせるとそれは「修理」じゃなくて「破壊」なんですよね。しかも、お客さんに断りなしにやったとすればちょっと問題ですよね。修理されたものが弾きづらく感じた場合は「弾きづらい」とはっきり言うべきです。そうすると、「直ってますよ、許容範囲ですよ」と言われることがあると思いますが、許容範囲かどうかはお客さんが判断するのであって、職人が判断するものじゃないはずです。「私には弾きにくいんです。あなたの修理は納得できない」ってはっきりいうべきですよね。お客さん自身がもっと強く出てもいいのに、医者と患者のような関係になっているケースが多いですね。

それと、自分にとって弾きやすい状態や音というのは感覚ですので、個々人で違うと思うのですが、「3弦の音をもう少しブライトにしてください」とか、「もうちょっと音が出るようにしてください」とか言われても、どういう音のことを言っているのかなかなか判断できません。そのためにも、直す前の音を覚えていてもらうために、弾きやすくするための修理は、極力2時間半以内で収めるようにしてるんです。手の感覚にしても音の感覚にしても、一週間も二週間も覚えておけないですから、長い間預かってしまうと、「はい、できました」「あれ、こんなんだったかな」となってしまう。2時間だったら「あ、直った」と分かるでしょ。それがモヤモヤした気持ちを解決するための修理なんです。実際には、修理をやってないというか、お客さんの立場に立ってない修理を行っているところが多いように思います。

 
■最近の修理の傾向で特徴はありますか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

修理の件数が増えてますね。70年代にギターをやっていたお父さんやお母さんが、自分の息子さんにギターを弾かせたいというのと、最近のギターは商業主義になって本当に職人の魂のこもっている楽器が少なくなってきているというか、あっても高いので買えないので、70年代や80年代のものを直して使いたいという人が多くなっています。そういう意味では生活の中に音楽が入り始めているのかなという感じです。新しいものが売れているというのはブームでしかないのですが、先代、先々代からずっと引き継がれて名器となっていくバイオリンのように、ギターも引き継がれていって欲しいと思います。

楽器というものは、基本的にいつもメンテナンスを入れていく必要があるものです。特にギターは、弦楽器の中でも荒く使われる楽器で、ダメージは大きくなりますので、弦を買いに行くついでに楽器もチェックしてもらうというような感覚で、気軽に直す体制ができるといいですね。

 
■基本的な管理についてお伺いしたいのですが、まず、ギターの弦は緩めるべきですか ・・・・・・・・・

それはもちろん緩めるべきです。そのほうがストレスがたまりません。Sヤイリさんで作っていた初期の頃のギターは、鉄芯の反りが強くて緩めたら逆反りするようなこともあるのですが、そういうギターは例外で、基本的には弦を緩めたほうが楽器のダメージは少ないです。

ダメージの出方はいろいろなのですが、スキャロップになっている場合は、ボディに出やすいですね。ギルドの場合は、しっかりしている楽器だから、ボディとネックの接合部分、つまり差し込み角度に影響が出やすい傾向があります。弦を緩めなくてもいいという弦楽器はピアノくらいのものですよ。バイオリンでさえ緩めるのですが、ましてやギターは鉄弦6本を引っ張り上げるわけですから。

「緩めなくていい」というのは、70年代のミュージシャンが「張りっぱなしのほうがいい音するよ」というコメントをしたことから広まったように思いますが、実は、いい音がするんじゃなくて、そこで表板のふくらみが止まっただけなんです。逆に言えば、張ったときに表板が持ち上がって、振幅率が出る余裕がなくなったことであり、ジャカジャカ鳴らさないと出ない楽器になったということです。

ケースに入れるということについても、地震や不注意を考えると入れたほうがいいにきまっています。ただ、そうは言っても、楽器の扱い方には個人差がありますから、我々にはこうしろとはいえないのですが、自分が大切にしているものは、大切に扱って欲しい。このままにしておけばどうなる可能性があるのかということを考えて使って欲しいと思います。

  
■湿度管理で注意すべき点は ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今の時期、湿気の多いのはよくないということで、ギターのサウンドホールの中に乾燥剤を入れる人がいますが、楽器に直接乾燥剤が触れると、その部分だけ極度に乾燥します。すると、その部分から余計に割れやすくなりますから、乾燥剤を使う場合は、ケースのヘッドの部分に置くようにしてください。

湿度が高いと、木材が湿気を含み、ボディに波を打ちやすくなると同時に音が出にくくなります。また、湿気によって木は膨張しようとしますから、ブレイシングもはがれやすくなります。逆に乾燥し過ぎると、接着剤で固まっている部分がもっと縮まろうとして割れることになります。一番いいのは作った状況の環境を保つということですが、それほど神経質にならなくとも、楽器というものは許容範囲を持っており、意外と強いものですから、普段生活していて自分が不快に思わない環境を保っていれば大丈夫です。

 
■フレットの交換が必要な時期の判断は ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分にとって音が伸びなくなったと感じたときですね。あとは、指板に爪が立ったとき。弾けないことはないのですが、音が伸びなくなった状態でさらに弾いていくと、指板に爪が立って削っていく原因になってしまいます。
フレットが減ると、点でなくて面で弦を押さえることになりますから、音は明らかに伸びなくなります。もちろん、押さえるとビビりますし、目でもはっきりわかります。フレットにくぼみが出来たときは交換時期です。また、完璧なバランス調整を求めるのであれば全部替えたほうがいいのですが。お客さんの負担も考えて、一部の減ったフレットだけの交換もやってます。

  
■アジャスタブルロッドの調整について注意点はありませんか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まず、ロッドの調整は、弦高の調整が目的ではないということを皆さんに知ってもらいたいと思います。少しロッドをいじると弦高が変わったように感じるのですが、実際にはネック全体のバランスのよい弦高調整にはなりません。つまり、弦高が変わるまでロッドを締めようとしますと、0フレットにロッドがあるものだと、3〜7フレットはビビルようになってしまいますし、サウンドホールのほうで調整するものは、締めすぎると9〜13フレット部分が山なりになり、ロッドを折る危険があります。

ロッドというのは、ネックの状態を固めて、その状態にとどまるように調整するものです。ネックの調整の際は、専門の道具を使って、ネックと指板のコンディションを固める作業を行うのですが、その状況を保つためにロッドを使うのです。ロッド調整だけでネックの調整ができるという発想は大きな間違いです。ロッドで調整ができると思って自分で作業を行うと、止めるべき部分が動いたり、締めすぎてロッドを折ってしまったり、大変なことになりがちです。もちろん、アジャスタブルロッドでもネックは多少動くのですが、0フレットにあるものは7フレットまでの補正。サウンドホールにあるアジャスタブルロッドの場合は12フレット前後のところを補正するという意味でついていると思ったほうがいい。ロッドはあくまで、ネックを弦の張力に対して補正するものです。

  
■これまでお話をお聞きしていて、お客さんとの長いコミュニケーションを前提にした店作りのコンセプト
  を感じるのですが、そうなると、どんなお客さんが来るかということも重要になりますね ・・・・・・・・・

そうかも知れませんね。私も、お客さんには失礼なことなのですが、話をしてみて、絶対に合わないお客さんには「他の店で買ってください」といいますからね。お客さんにとっても、楽しく会話ができないお店というのは、いてもつまらないと思うんです。やはり、お客さんが一番コミュニケーションのしやすいお店で買ってもらうのがいいと思います。もちろん、対応が合わない店で買った場合は当店にきてもらって結構です。最近は門戸を広げましたから(笑)。

以前は、ギターに当店のシールがないと、本当に門前払いだったんです。「カワセは殿様商売をしてる」って随分言われましたけど、本当はそうじゃないんです。殿様商売をしているように見えるけど、本当は長い間お客さんに真心を持って接するための方法なんです。

今では、修理で困っている人が多いこともあって、シールを貼ってないギターの修理も受けていますが、やはり当店のシールを貼っているギターを優先しますし、修理の代金も、一緒の修理であっても違います。そのことは、説明するとお客さんは納得してくれるのですが、そこで「じゃ、シール売ってくれませんか」という話になるわけです。お客さんの気持ちはわかるのですが、それは絶対にしないです。先代というのはよく考えていまして、当店のシールは、一度はがすと二度と貼れないような特殊なシールになってます。そして、一度はがしたものについては、ギャランティを放棄したというふうに考えています。

ただ、戦うオヤジの応援団のネームタグをつけたギターの修理は、シールを貼っていなくてもちゃんと応援していますからご安心ください(笑)。

 
■修理について他に注意すべきことはありますか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

修理の見積もりはその場で出してもらい、聞いて納得できるまで説明をしてもらうことが大切です。聞くことは恥ずかしいことでもなんでもないですから、自分の大切なものを預けることに対して「どういう修理をして、どういう状態になってかえってくるんですか」と聞かないとだめです。思ってもいなかった部分を削られたりするようなトラブルがあって、その楽器が気に入らなくなると、楽器を処分したくなるものです。お金を払って修理して、処分したくなることになったら、何のために買ったかわからないですよね。

納期については「二日でできます」と言っても、実際作業をしてみるとできない場合がありますので、少し余裕をもっていただけるとありがたいですね。

最近は修理屋さんが増えています。なぜかというと、楽器を東南アジアの工場とかで作るようになって、日本の工場が閉鎖しています。そうなると工場にいた人がリストラで辞めていくのですが、その後、工場でやっていたことのノウハウがあると思って、自分で修理屋を始めるのです。これは大きな錯覚なんですけどね。楽器を修理して元に戻すということと、新たに楽器を作ることの工程は全く違うものです。例えば、力木がはがれたのをくっつける場合、くっつけるという行為は同じでも、どうしてはがれたのかということがわからずに単純にくっつけるだけだと、余計に変になってしまいます。

お客さん自身も、修理の時には、どうしてこういう状態になったのかをよく聞いて、知識をつけていただきたいと思います。よく、どんな接着剤を使うんですか、ニカワは使わないんですか、とか聞かれるのですが、自分が職人になるのを目指しているのであれば別ですが、そこのことは任せればいいんです。もっと肝心な部分、なぜ良い音が出なくなるのかを聞いておかないと。

修理というのは、一番よかったときのコンディションに戻すことです。修理の後、そのコンディションを維持するためにも、どうして修理が必要になったのかをしっかり聞くようにしてください。そして、原因をはっきり説明できる店を選んでいただけるといいですね。

 
長い間、どうもありがとうございました。これからも「戦うオヤジの応援団」をよろしくお願いいたします。

 
2005年7月12日

トップページへ>>