2004年11月14日
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「我、今まさに潜行せんとす」
 
(藤代のやす/51歳/茨城)


 私は海が好きである。学生の頃はよく海へ行った。
海を眺めて感傷に浸ったり、海岸でキャンプ・ファイアをしたり、友人と語り合ったり、もちろん泳いだ。数キロの遠泳にも参加した。
久しく海へ行っていない。綺麗な海が少なくなったというのは言い訳で、現実に追われて遠のいたか、強く希望しなくなったのか、まあその辺が理由。

 時を同じくしてギターからも遠ざかった。
と言っても、ギターに関して言えば、多くの団員の皆さんのように深く関わった時期は極端に短かったように思う。
 幼少期から、中学・高校と体育会系で通した私は、興味はあったが横目で見て過ごした。フォーククルセダーズやP.P.Mその他の音楽をラジオでランダムに聞いていた。
大学に入ってからは体力的な限界を見越し、スポーツはレジャー的なものに切り替えた。有り余る時間と、枯渇状態の小遣い事情とのせめぎ合いの中で、まさに20歳を迎える寸前に、アルバイトで稼いだ金でギターを買った。
「Chaki W-2」という機種、アリスが大好きだった1年後輩にそそのかされて、大枚を叩いた。かと言ってギターサークルに入って練習したりすることもなく、全く関係のないサークルの合宿で奴とアリスを歌う程度。それでもその後1年くらいの間には拓郎や陽水その他カッレジ・フォークと呼ばれた歌等をこれもランダムにコピーし、一人で歌っていた。
卒業真近に、地元で細々と活動しているサークルの呼びかけで飛び入りでライブに参加したことが記憶に残っている程度。

 社会人となり、ますます縁が遠くなったギターだがマネージャーとして所属した会社のコーラスサークルで(歌の方は、地声でハーモニーを乱してばかり)唯一フォークソングに興味を持っていた仲間の送別会で昔の歌をやろうということに。
その時買ったのが「K.Yairi DY18」。
(この頃には少しばかりのへそくりがあったから、しかも駅に近かったというだけの理由でカワセ楽器に飛び込んで・・・)。
だが、彼が転勤してしまうとギターはケースにいることが多くなった。これが10年以上前のこと。

<振り返ってみるとなんとも淋しいギター・ライフだった>

 さて、このようなギター・ライフを振り返ると、どう転んでも昨年10月の出来事は起こり得なかった。今となっても説明し難い。仕事の最中、たまたま覗いた楽器屋の、新品に混じって壁に吊るされていた中古の「Martin D-41」(ここにきて、貯めに貯めた500円玉貯金が日の目を見ることに)これとて、多くの団員の皆さんのように豊かな経験を経てやがてたどり着いた結果でもなく、敢えて表現するとしたら「閃き!」としか思えない。この「閃き!」がなかったら「戦うオヤジの応援団」を知る縁もなかったわけだ。

< そう、きっかけは1本のMartinから・・・。>

 今、サーフィンやヨットには触手が動かないが、機会があればスキューバーダイビングをやってみたいと、ふと思うことがある。財力と体力が許せばの話ではあるが。

 例えれば、ギターを弾き奏でる音楽とそれができる環境は海。
演奏者は海の中の生物、または、海そのもの。これまで私は海中を覗き、興味こそ覚えはすれどただ海面を浮遊していたに過ぎないのだなと思う。海の中はまだまだ未知の世界。楽しみはふんだんにある。(魔物がいっぱいいたりして・・・fufufu )

    ≪1本のツールを手にし、
         良き仲間と出逢い、
             我、今まさに潜行せんとす。≫
                      



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