2004年12月27日
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「鬼の副長と呼ばれた男」
 
(一年3組 ドナルドしま/45歳/神奈川)
 


 遠い昔、かれこれ25年ほど前、私は『鬼』と呼ばれていました。こんなにかわいい顔した私が『鬼』だなんて…。

 この頃、私は大学の軽音楽サークルに属しており、副部長という立場にありました。このサークルは私が一年の時、当時一年先輩だった「ダックさん」を含む7名ほどでスタートした小さな小さなサークルです。妙に伝統と格式を重んじるサークルが多い中、気楽な雰囲気が受けたのか二年後には70名を数える大所帯となっていました。

 そんな中、さて、私は何の『鬼』として一目置かれるようになったのか。当然、音楽サークル内での話しなので、「ギターの鬼」 「作詞、作曲の鬼」 「コピーの鬼」などが浮かんできますが、そういうのじゃなく、「鬼の中の鬼」、(中には悪魔と呼んだやつもいる)だったのだそうです。

 サークル、和訳で同好会、当然大学側からは金銭的な援助は一切ありません。したがって、サークルを運営していく上での経費は全て自前となります。PA、アンプ、照明、などなど結構掛かるんですよね。そこで、部員の個人負担会費として毎月一人1000円を徴収していました。いるんですねー、納めない奴が。ここからが鬼の出番です。

 サークルに顔を出す者で未納な場合は、注意を促せばだいたい2〜3日で持ってきますが、注意すると翌日から来なくなる奴、こいつらが厄介でした。キャンパス内で私の顔を見て逃げる奴までいましたからねー。そうなったらこっちも意地、夜遅く彼の在宅を窓の明かりで確認しつつ押し掛けました、下宿まで。彼は未納者の中でも“つわもの”で、5ヶ月分が未納だったのです。辻説法二時間の甲斐もなく、生活苦を理由にまったく納める気無し。いったいいくら持ってるのか聞くと、見せるんですよね、5000円しか無いって。冗談じゃない、私から言わせれば《5000円有る》、な訳で、電光石火、取り上げました。追いすがる彼を「お前が悪い」とか言いながら振り切り、その場を後にしました。小さな快感を味わいつつ。

 翌日、私は「鬼」と呼ばれる存在に変わっていました。いーもん、鬼でいいもん。俺が悪いんじゃないもん。てな訳で、開き直った鬼ほど怖いものはないんです。回りましたよ、徹底的に、未納者リストを片手にほぼ全員。

 傑作なのが、私のせいで未納者間に連絡網が出来上がったらしく、昨日うちに鬼が来たから今日は誰々の所に行くとか云う連絡をし合うようになったらしいんです。ある日、懲りずにまた未納を起こしている3名の下宿を回ったら遅い時間なのに居ないんですね、だーれも。仕方ないので、前日集金に伺ったお客さん、あ、いやいや、後輩、の所へ伝言でも頼もうと立ち寄ったら、居るんです、全員。しかも、翌日行こうと思っていた者も含めて5名。浅はか、軽薄、馬鹿、頓馬、まったく情けない。聞くと、前の日に取り立てた所には来ないだろうと避難していたって言うんですよ、馬鹿どもが。一網打尽でしたね。これまでに無い快感を味わいつつ、その場を後にしました。翌日から私は「鬼の中の鬼」と呼ばれ、部費の未納者も激減していったのでした。めでたし、めでたし。

 この後鬼は、名前だけ登録していて顔すら出さない「幽霊部員」への取立てに着手していくのですが、これまた色々ありました。しかし、文字数がオーバー気味なのと、内容がかなり過激?であるがため書けません。興味のある方は直接お尋ねください。

 こんなことばかりやっていたので、ギターの腕はご承知のとおりです。因みに、現在の職業は金融機関とはまったく関係ございませんのであしからず。では皆さん、良いお年をお迎え下さい。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。


 
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