「オリジナル曲」 |
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(masakazu/53歳/和歌山) |
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私は今、オリジナル曲のレコーディングを楽しんでいます。
と言っても大層なものではなくて、パソコンソフトを使ったお遊び程度
のものです。
多重録音が出来るので、ベースとドラムのパートをキーボードから打ち込み、それを聞きながらアコギの伴奏を入れ、ボーカルを入れ、最後にエレキのソロで味付けをします。
録音時は緊張するので、普段は簡単に弾けるコードストロークでさえリズムのキープが出来なかったり、コードの切り変わりに指がついていけなかったり、苦労の連続ですが、ギターを始めた頃のワクワク感が戻って来て、ちょっと若返ったような気持ちです。
私がギターを弾き始めたのは30年程前のことでした。
ある日のこと、枕元で聞いていたラジオの深夜放送から、吉田拓郎の「イメージの詩」が流れてきました。
「これこそはと信じれるものがこの世にあるだろか」と始まる歌詞の言葉一つ一つが、頭の中を突き抜けていきました。拓郎の歌の魔力に魅入られたのでしょうね。翌朝には、蓄えていたお金を握りしめ楽器屋に走り、当時の安月給に見合ったヤマハの安いギターを購入しました。
そのギターは、何とも無骨な合板特有の鳴りで、その上に初心者がジャカジャカと弾くのですから、ギターではなく騒音発生器と化していました。近所の迷惑省みず、毎日夢中になって練習をした結果、何とか下手な歌の伴奏が出来る程度まで上達したのですが、それ以上の才能は持ち合わせていなかったようで、上達もそこまででした。
後に、ギターの方は東海楽器のキャッツアイに持ち替えました。
そんな歌下手、ギター下手の私ですが、自分の曲を作って歌いたいとの思いを、ずっと持ち続けていました。
その思いがかなったのは、昨年のことで、私の所属する天文同好会でテーマソングを作る話が持ち上がり、私が作詞作曲を担当することになりました。
実は、約10年前のこと、私は心の病を患いました。生きる気力を失い、好きな歌を歌うこともギターを弾くことも出来なくなりました。
部屋に置かれた愛用のギターが、弾かれることもなく壁に立てかけてあることが辛く悲しく、ギターをそっとケースに入れ倉庫に仕舞い込み、歌があった日々と別れました。ギターを弾く日は、再び訪れてこないだろうと思いながら..。
あれから長い年月と様々な紆余曲折を経て、私は心の病から、ほぼ脱却することが出来ました。
近所の天文仲間との交流が大きな転機となり、自信を生み、世の中の流れに戻っていきました。その時を待っていたかのように、作曲の話が舞い込んできたのです。それは偶然の必然だったのでしょう。
作曲を始めるにあたって、何はともあれ倉庫に仕舞っていたギターを引き出してきました。
恐る恐るケースを開けてギターの状況を確かめると、ペグには錆が浮きボディには薄らとホコリが積もっていましたが、どこにも異常は見当たりません。ゆっくり手に取り、音を合わせ、軽く弾いてみました。不思議なことに、以前の堅い音色が、円やかな音色に変わっていました。ギターも、長い年月私と同じように苦しんで、優しくなったのかな。
作曲を初めて数週間後、天文同好会のテーマソングが出来上がりました。
歌詞は、天文関係の言葉を含めて、自分への応援歌の意味も込めて書きました。曲は、誰でもが口ずさめる簡単なメロディで明るい雰囲気に仕上げました。が、会員の評価は散々なもので、正直へこみました。
「ほしぞら」 作詞 masakazu
春の菜の花風に揺れ 遠く離れたふるさとの
あの日のような星空に 思わず涙がこぼれてた
夏の嵐が通り過ぎ 一人夜更けに見つめてた
白く流れる天の川 羽ばたく思いは白鳥に
光り輝く星たちよ 高い空から見守って
精一杯生きている 僕らのことを
秋の枯れ葉が舞う道を 肩を並べて歩いてた
あなたの言葉を待っていた 夕焼け空に星一つ
冬の木枯らし身をすくめ 見上げた夜空に流れ星
強い心で立ち向かう あなたの姿はオリオン座
光り輝く星たちよ 高い空から見守って
精一杯生きている 僕らのことを
悪評にもめげず、次は、ペルセウス座流星群を観測した時に作った詩を元に曲を作りました。
天文同好会の仲間と早朝まで流星観測を続け、夜明けの空を明るく流れる流星と、濃紺の空が赤く色づいていく様子に心奪われて、壮大な宇宙のドラマに比べれば、自分に起きた事はちっぽけな出来事だったなとつくづく思い、この詩を書きました。
「流れ星」 作詞 masakazu
旅の空を流れる星は
遠く聞こえる海鳴りに
静かに 静かに消えた
故郷の空を流れる星は
悲しい日々の思いを背負って
優しく 優しく消えた
緩やかな坂道をゆっくり登り
たどり着いた大空の下
何かが変わる そんな気がした
夜明けの空を流れる星は
あしたの夢を明るく照らして
穏やかに 穏やかに消えた
勢いがつくと不思議なもので、次々と作曲する機会が訪れて来ます。
今年最初の天文同好会のホームページの表紙を飾る詩が、どことなくリズムを持っていたのでメロディをつけてみました。
「朝」 作詞 emi
カウントダウンは物語の始まり
夜のカーテンを彩る星も
スポットライトのような月も
ただ今日の最初のページを飾る
見上げよう空を 手をのばそうその先に
どんなストーリーを描けるだろうか
上る一番の太陽の下
真新しい空気を吸い込んで
歩き出す あなたと
さっそく出来上がった曲を、この詩を書いたemiさんに聴いてもらいました。
emiさんは、この詩は曲がつくことを想定して書いたものでないのでと、戸惑いながらも喜んでくれました。図に乗った私は、定期的に詩(歌詞)を書いていただけませんかとお願いしてみました。少しの沈黙の後、歌になる詩は書いたことがないけど挑戦してみますとの返事が返ってきました。
そうして、この春には「桜雨」が届きました。
「桜雨」 作詞 emi
別れと出会いが 交わる道で
風に乗り 飛び立つ僕らの言葉は
遠い未来と過ぎていく足跡へ
小さな花を 落としていった
巡り 移りゆく季節の中で
変わらない 僕らの強い気持ちは
高い宇宙(そら)に輝く星のように
いつまでも...いつまでも...
今を渡る鳥になろう
花吹雪を羽にまとって
薄桃色の恥じらいは
はにかむように舞い降りた
手を振るようにヒラヒラと
桜の雨が舞い落ちた
本当は、桜の花の頃にしとしとと降る雨のことを「桜雨」と言うのですが、桜の花びらが一斉に散る様子を雨に例えて「桜雨」としたそうです。桜雨の言葉の響きが、とっても情緒があって好きです。
この歌は、仲間と出会い、再び歩き出した私のことを歌っているような気がします。そのことをemiさんに聞いてみましたが、笑っているだけで答えてくれませんでした。
「巡り 移りゆく季節の中で 変わらない 僕らの強い気持ち」とは、誰もが等しく持っている「生きる力」のことでしょうね。
桜の花は、厳しい冬を乗り越えてこそ美しい花を咲かせるそうです。
辛い季節を乗り越えてきた皆さん、今、どんな花を咲かせていますか。
小さな音量でNSPの曲を聞きながら、この文章を書きました。
天野滋さん、優しさをありがとうございました。
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