2006年12月27日
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「わがいとしのライダーギター」
 
(うちのり/48歳/千葉)


今私の目の前にあるギター、マーティンD41。今年はじめてこの「オヤ応」の納涼会に参加する直前にお茶の水の石橋楽器店で買ったもの。ボディも大きく迫力もありさすがに音色がよい。

ふと部屋の片隅に目をやると、そこにはポツンとギタースタンドに無造作にたてかけられたままたたずんでいる。もう1本の古いギター。

ライダー、想えばお前とは長い付き合いだったね。お前との運命の出会いは僕が高校生のとき、やっぱり同じ御茶ノ水の石橋楽器店だったね。そのときお兄さんがひとこと、「これ音いいよ」って、中川イサトの“その気になったら”をさりげなく弾いているのをみて思わず買ってしまったね。2万5千円の24回払いで。

あの時以来30数年、お前には苦労のかけっぱなしだった。ポールサイモンやディランIIなどを頑張ってコピーしてもなかなかうまく弾けなくて、すべてお前が悪いと決め付けたり、誤って机の角や友達の頭に思いっきりお前のボディをぶつけて傷つけたり、まるでドメスティックバイオレンスみたいなこともしてしまっていた。。。。あの頃は僕も若かったんだ。でもわかるだろう、どれだけお前を大事に想っていたか。だって“Rider”の綴りが“Ridar”になってて友達にダサいといわれ馬鹿にされても僕はお前の味方だったじゃないか。

僕はこれから暫くマーティンと過ごそうと思うけどお前を忘れたわけじゃあないさ。何よりお前との付き合いは僕の女房より長いんだよ。だからライダー、マーティンともどもうまくやって行こう!僕はお前を裏切ったりはしない。

かくして社会の汚れを知ってしまったおじさんはライダーとの中途半端な和を尊びながらとびきり美しいマーティンとの幸せな時間をすごしているのでありました。

そういえば、中学生の時に親に買ってもらったモーリスはどこにいってしまったのだろう?



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