静かさが足りない
 
日高の鳥さん
  

街の喧騒は、
それはそれでひとつの音の世界だと思う。
車の音、足音、信号機の音。
遠くに聞こえる人の声や電車の音。

ところが、今や誰もが携帯電話を持ち歩き、どこにいても話す。
ときには狭い空間に押し込まれて、その中で携帯電話を使われると
周囲のものはうんざりする。
「今電車の中だから話ができない」と言って話している。
そもそもマナーモードにするのがエチケットではなかったか。
いや、すでにエチケットというレベルではなく、ルールに近いのでは。
人の会話をそばで聞いているのと違い、
内容不明な長い話しかけを聞かされるのでうるさい。
そこにたたみかける社内アナウンス。
皆わかってるよ。やるやつはいつもやるんだどこででも。

大音量のイヤホンで音楽を聴く人は、自分の音漏れに気づかない。
自分の音漏れを自分で確かめることができないのだから、当然だ。
屋外ではいつもイヤホンをしているので、世間の音に無関心。
つまり、救いようのない連中で、恐らくすでに難聴と思われるが、
ますます音量が上がり、人とトラブルを起こす種を持ち歩いている。
周囲の音に気づかなくなり、空気が読めなくなり、やがて孤立するかも。

先日人気のない西大宮駅で、エスカレータの乗り方について
終日繰り返しアナウンスされているのを聞いて、笑ってしまった。
もっと静かにしろよ。エスカレータの乗り方など誰でも知っている。
どうせ怪我してもJRは責任取らない。

いったいどうしちまったんだ。
ここんとこ、ちょっとうるさいよ。
ああしろ、こうしろ、というアナウンス。
自動販売機までが有難うを言う。
どうしてこんなに余計な音が氾濫しているんだ。
ぜんぜん静けさが足りないよ。
黙って立っていると風の音が聞こえるくらい
泰然とできないものか。

街の音はBGMになるほどいい音源だ。
ただ、人がしゃべり過ぎる。



2010/02/28
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