清酒を晩酌で飲む 
 
日高の鳥さん
  

 同朋の諸氏にはそれぞれお気に入りの酒があると思いますが、その中に清酒ありますか。日本の民族の酒である清酒を、このごろ飲んでいますか。
 米の磨き具合で香りが違うことはご存知だと思いますが、当然ながら、40%も磨いてしまう大吟醸酒はとても高価です。でも、一升5,000円を超すような高級品を晩酌にはできません。旨いのは確かですが、高いし、たぶんすぐに飲み飽きてしまいます。これって、男と女の関係と同じですね。
 私は、下総神埼(千葉県香取郡)の純米酒を、かれこれ3年くらい飲み続けています。甘み、酸味、旨み、香り、舌触り、喉越し、どれもほど良い。四季を通して飲むので、冷たくして、冷で、ぬる燗で、どれも旨い。つまり飲み飽きない。すっかり惚れこんで、途中で何度か浮気をしましたが、すぐに元に戻ってしまいます。
 その酒は、分類としては「特別純米酒」です。普通酒は、一般的に30%ほど米を磨きますが、「特別純米酒」はもう少し米を磨いて、より吟醸酒(50%磨く)に近づけています。普通酒より香りが高く、全体的に質がよい割に、価格は一升2,345円、二合で469円です。
 二合の酒を、お気に入りのグラスに注ぎ、食事をしながら毎晩飲みます。食中酒として重要なのが酸味です。清酒の酸味というとピンとこないかもしれませんが、ワインが食事とともにあるのは、酸味があるからです。清酒の酸味とは、勿論、酢や果物ような酸味ではありません。後味で感じる酸味のことです。水のような辛口の酒ではなく、芳醇で甘み(旨み)のある酒に酸味を感じるものが多いようです。この酸味は油の多い料理にも合います。家庭料理の範囲であれば、ほとんどの料理に合います。
 清酒は、国産の原材料で、最適な環境、人の知恵、そして人の技でつくる民族の酒です。水の硬度による甘辛の違い、米の磨きによる香りの違い、使う米麹による発酵の違い、どんな酒をつくるかにより仕込み方が異なる。温度の管理が異なる。正に人がつくり得る、世界最高水準の酒と言えます。日本人に生まれたことを幸運と思いたいものです。
 そういう視点で、もう一度清酒を見直してみませんか。酒器へのこだわりや酒の肴へのこだわりなどが生まれると、もっと奥深い酒道の境地が見えてくるかもしれません。いや、清酒って本当にいいもんですね。ぜひご一緒しましょう。

 
2011/09/18
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