KUWANOギター 
 
日高の鳥さん
  

 先日、久しぶりに御茶ノ水ブルーGへ行った。特に目当てがあった訳ではないが、静かな店の雰囲気が好きで、ときどき寄って情報を得る。珍しく57年タバコサンバーストのサザンジャンボがあった。80万円以上の値が付けられ、他のギブソンを圧倒していた。アジャスタブルサドルでないところが味噌で、見た目はなかなかの美人だったが、さて、音はどうか。ギブソンといえば、古井戸の二人が弾いていたチェリーサンバーストのハミングバードを思い出さずにいられない。あの当時、高級品はマーチンしか知らなかった私にとって、ど派手な赤いギターはおもちゃに見えたものだ。ギブソンの音をちゃんと認識したのはレコードではなく、古井戸がテレビに出て「ちどり足」を歌ったときだった。深みのある低音と際立つ高音で、ギター全体が鳴っていた。私の音の記憶にギブソンが残った。

 今回ブルーGで試奏させてもらったのは2009年製KUWANOギター#021。カリフォルニアで坂下氏の元にいて、現在は大分県日田市で製作活動している桑野亜矢喜 氏のギターだ。#021は製品の通し番号だそうで、21番目のギターの意。サイズはなで肩のドレッドノート。トップはシトカスプルース、バックとサイドはアフリカ産ローズウッド(ブビンガ)。シャリっとした硬質な音。バランスがよくストロークでもピッキングでもOK。何しろ音が大きくクリアだ。細部の仕上げはどれも美しい。まったく個人的な感想で恐縮だが、これは多くの人に支持されるギターだと思った。東京で実物があるのはブルーGだけだそうで、あとは地元日田市にあるシミズ楽器だけとのこと。ちなみに価格は42万円ナリ。

 私は、今使っている57年J-45、76年マーチンD-18、そしてオリジナルギター2003年“カワセミ”の3本があればいいと思っていたが、ちょっと気持ちが動いた。息子が売れるギターを作れるようになるまで待つつもりでいたが、もしかしたら待ちきれずに死んでしまうかもしれない。今手に入れなかったら逃すかもしれない。いや、桑野氏はもう何年か待てばもっといいギターを作るようになるかもしれない。まったくもって悩ましい限りだが、結論が出ない。しかし考えてみれば贅沢な悩みで、無関心な人にはばかばかしい悩みでもある。結果として、ブルーGに行って悩みをひとつ持ち帰って来た。

 
2012/1/31
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