雲取山 
 
日高の鳥さん
  

雲取山は東京都の最高峰(2,017m)である。東京の最も西の端にあり、埼玉県と山梨県の境にもなっている。頂上までおおむね4コースあり、どこから登っても5時間以上はかかる。
頂上直下の埼玉県側に年中無休で営業している雲取山荘があり、どの季節に出かけても安心である。最近は山ガールと称する若い女性の姿が目立ち、しかも単独の人もいて驚かされる。山はジジババというイメージが強いので、オヤジ化した女子さえ泥池に咲く蓮華のように見えるのはごく当然といえよう。かく思う私がすでにジジの領域に近づいたか。

平日の静かな雲取山を歩いてきた。新緑の三峰神社からそっと森に入ると、薄暗い山道の先を霧が静かに流れる。20m先が見えない。姿を見せないホトトギスやウグイスの声がやけに大きく聴こえる。この登山道は信仰の道でもあり、かつては多くの三峰講の信者たちが歩いた参道だ。ひたすら森の中を歩くコースで、高い山の北側のため冬はかなり積雪があり、東京近郊で雪が楽しめる数少ないコースのひとつだ。三峰神社まで、徒歩と電車とバスを使い3時間あまりで行ける私にとっては、このコースは実に近くてかつ魅力的だ。

この日は下界では曇りだったようだが、標高1,000m以上では夜まで小雨が続いた。しかし、雲取山荘までは森の中を歩くので、レインウェアを着なくても大丈夫。梅雨の天気はだいたいこんなものだ。朝自分で握ったおにぎりを歩きながら食べ、ザックに付けた水筒からチューブでスポーツドリンクを飲み、誰と話す訳ではないので休憩はあまり取らずに同じペースで歩く。これが独りで歩くときのいつものスタイル。ただひたすら歩く。今日のザックの重量は14kgで1泊2日の単独テント装備としてはまずまずの重さだ。

テントを立ててから暗くなるまでに晩飯を食べてしまう。実際に腹が減るし、明るいうちに支度をした方が安全で安心。小屋の受付で買った缶ビールはテント完成と同時に飲み干し、ワンカップ酒はご飯といっしょに腹に収まってしまった。気圧の低いところでの深酒は厳禁と戒める。6時ごろにはもう何もすることがなくなる。ギターがあればなあなどと考えてもそれは無理。最近は薄い文庫本を持って上がり読むことにしている。一日中誰ともしゃべらず、ゆったりとテントで読書としゃれこむが、睡魔に勝てず7時に就寝。

4時起床。9時間の爆睡で気力充実。寝袋を片付けて、湯を沸かしてコーヒーとパンと魚肉ソーセージの朝飯を済ます。テントを撤収して全部をザックに詰め込むと5時。すっかり明るい空には日が差している。今日は晴れるぞ、と靴紐を締め直して出発。雲取山の頂上は霧に覆われて通過。さて、ここから奥多摩駅まで下ること6時間あまり。すっかり晴れ上がった稜線を黙々と下る。楽しいかと聞かれればNO。自分を試しているだけ。最後は膝がガクガクになってヨレヨレで駅に着く。ホームで飲んだ缶ビールが最高のご褒美だった。

  
2012/6/17
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