記念日にギターを 
 
日高の鳥さん
  

芸は身を助ける。が、果たしてギターは身を助けたか。ギターが弾けるというキャリアだけは長いが、これで金を稼いだことはない。誰かに物凄い感動を与えたこともないだろう。
趣味のお披露目として登場し、自分なりの歌をギターで歌って喝采をあびたことくらいか。今やっていることもこの延長であり、残念なことに、あまり進歩していない。

蛙の子は蛙。私の息子がギター作りを仕事に選んだのは、果たして必然だったのか。息子は生まれる前から胎内で私の歌とギターを聴いていた。生まれてからも途切れることなく聴いていた。ギターを弾く父親を見続けてきた。そして、中学のころからギターを弾き始めたが、一度も私に教えを請うことはなく、私も取り立てて教えなかった。

ギターを作りたい。進路を決めるときになって聞いた18歳の息子の本音。おもしろいじゃないか、応援するからやってみろ、と即答の私。まさかこんな形でギターとの係わりが持てると思ってもみなかったので嬉しかった。やりたいことが決まっている強さ、好きなことを仕事にしようとする若さに感じ入り、全面的に応援することにした。

タイトルの記念日とは私の定年。もうすぐ56歳になるが、あっという間に迎えることになるだろう定年の記念に、オンリーワンのギターを作ってほしいのだ。アコースティックギターの音を愛して止まない私だけのためのギターを。ちなみに予算は親子割引で40万円。先日、息子とのギター談義の中で突発的に発注してしまった。

逆も真なり。音について敢えて触れないのは、ギターは使う木材の種類や組み合わせ、ボディの形と大きさ、ブレイシングのパターンなどで、必然的に音の方向性が決まってくる。逆に、求める音に近づけるためには材料や構造がある程度限られてくる。しかし、意外な組み合わせから、とんでもない音が生まれる可能性も楽しみだ。

構想中のギターは、12フレットジョイント、ドレッドノオト、スロッテッドヘッドという形で、粘りのある大きな音のするもの。マーチンやコリングスにわずかな既製品があるが、トップ、サイド、バックに国産材を使ったらどうか、などと想像をめぐらせている。問い合せはbird_spot@yahoo.co.jpでどうぞ。

   
2012/11/18
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