親父 
 
ジョンジョン
  

私は親父だ。
私の親父にも親父がいた。
しかし私はその人(祖父)をほとんど覚えていない。
ほんの微かな笑顔の記憶だけが残っている。

私の母にも親父がいた。
しかし私はその人を全く知らない。
母から聞いた彼の最後は、広島県庁に出勤する直前に
原爆に遭い、生きているのが不思議なくらいの体で
ボロボロの自転車を引いて自宅まで帰って、
家族の無事を確認して、翌日亡くなったということだけ。
どちらの祖父も立派な人だった。

私の親父は銀行員だった。
とても顔の広い人で、彼の葬儀には1000人近い
人が参列した。
とても立派な人だった。

私も親父だ。
子供達とは離れてしまったけれど、
私は彼らの親父だ。
残すものは何も無いが、
親父でありたい。
とても、立派な人間とは言えないけれど、
この世にさよならを言う時に、
彼らは私を親父と呼んでくれるだろうか。
そして彼らの子供達に「親父」の話しを
してくれるだろうか。


   
2013/05/13
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