工事屋日記 
 
ラルフ
  

ダム建設に付いて、ダムと言うのは大雑把に分け、重力式ダム・アーチダム・ロックフェルが、あります。

ダムを作れる条件は、もちろんお金ですが、莫大な費用が掛かります。
事前工事?折衝だけで10年くらいかな、立ち退きの人の、住居・お墓の移転・植木の移転まで面倒見るのですよ。本工事は10年くらいかな(規模・方式にもよりますが)

私は機械屋ですから、ダムと言っても材料を運ぶベルトコンベア・コンクリを作るプラント・それを打設するための・ケーブル等組み立てます。
大体 Iの付く会社か・K・日・三の付く会社の談合で 決まります。

重力式ダムを 紹介いたします。
ダムは必ず 川が狭くまた近くに岩石取れる石山が、有る事が条件です。
セメントは セメント会社の手配で済みますけれど、ダムは砂利を膨大に使うので、市況に砂利がなくなってしまいます。だから現地調達になるわけです。

ゼネコンも同様建設省の各方面局で縄張りがあります。
機械屋はまず、河床(ダムの底・川の側)に コルゲートビン(サイロのデカい物)と言うものを 据え付けます。上からダンプで入れます。
ダンプは町場の 10倍くらいあります。
砂利が200mmから20mmまで、数種類入れ分けるのです。
その時ゼネコンは ダイナマイトでどんどん山を成形しています。
ダムサイトが パパパと光り ドカン・ドカンとなります。
数時間したら、岩石の除去(馬鹿でかい ブルトーザー排土板が2m位幅6m位かな)削岩機で再度ダイナマイトを仕掛ける穴を掘る音が聞こえます。

コルゲートビンの下に 切り出し装置(運ぶ量・種類を管理するゲート)と言う物を入れ込み、その下にベルトコンベアーを組み立てていきます。大体高さ100m位のダムだと、3Km位のコンベアーになります。勾配が急だと 石が戻り落ちてしまします。大体3%の勾配です。
一基のコンベアーで そんなに長くできません、モーターの能力・ベルトの長さが巻き取った時 道交法に掛からない直径です。ですから最大長さ500m位かな・乗り継ぎホッパーで(じょうご状な物)また別のコンベアーでダムサイトの頂上まで、組み立てます。基礎はゼネコンが作り、位置をレーザーで出し、ポイント・高さを正確に出してくれます。コンベアーを作っている数か月間ゼネコンは、河床の手入れ (河床はスキーのモーグルみたいな小山・公園にある滑り台くらいの高さ)成形しおばちゃん連中が高圧水で きれいに洗うのです、砕けた石・泥などがあると コンクリが定着しません。重力式と言うのは、水の重さを、ダムコンクリの重量で すべて受けるのです。だから底は 小山を何百と作るのです。アーチ式はダム内に膨らみを持たせ(アーチ)強度を強くまたコンクリ量が少ないのです。

機械屋さんは ダムサイトでバッチャープラントと言う物を作ります。
(町場にあるコンクリミキサー車が出てくるやつ・コンベアーが2m程のパイプで囲われている防塵対策の為)そこで砂利とセメントを配合するのです。

その後コンクリ打設用の設備、大きく分け ケーブル方式とインクライン方式があります。ケーブル方式はケーブルカーでコンクリートを入れるバケツで、
ワイヤーでそこが開きコンクリートを下に落とします。インクラインは、トロッコ式で片側のバッチャープラントより、崖に線路を引いて反対側まで走らせトロッコは底が開きコンクリートを打設します。高くになるにつれて、鉄道の橋梁のように櫓を組んでこれは、鉄筋の補強にもなるので、そのまま埋め殺します。土建屋さんは、ダム肌をピカピカにしてダムの中心線を入れます。(幅1m位の、白線)

ケーブル方式を少し詳しく
まずケーブルを駆動させるウインチを、組み立てます。馬鹿デカいので、分解しないと運べないのです。川幅が300m位だと。1動作に22mmの径のワイヤーが1000m位必要です。まずメインのワイヤー懸架ワイヤー・走行ワイヤー・底を開閉させるワイヤーも必要です。4軸と言って、ワイヤーを、送るための、ドラム・反対側から戻ってきたワイヤーを巻き取るためのドラム・開閉の為のドラム戻りドラム・各々計ドラム径1.5m程ドラム幅2.5m程になります。

まずメイン懸架ワイヤーを張る櫓を、組立てます。そうしますと数人で細いロープ(麻縄5mmほど)ワイヤーを張る本数だけと、細いですが長さがあるので数人で体に巻きつけ打設バッチャープラント側から崖を降りて行き、河床をわたり、反対側の崖を登山隊みたく歩き・よじ登っていきます。反対側の櫓滑車に通し、それをまた担ぎ戻し、ウインチに巻きつけて、だんだんと径を大きくして22㎜のワイヤーまでに格上げします。ダムは厚さがあるので、ケーブルカーのようにただ直線を走れば良い物ではありません。横にも動かないと打設できません。打設側は電源があるので大体打設側のみ 横行できるようにしてあります。巨大なダムになると反対替に、電源がありませんから いきおいジーゼルカーに櫓を組んで、横行させます。(燃料は自分のケーブルでドラム缶を運ぶのです・こればかりじゃありませんが)

ワイヤーも1000mを一本では運べませんので、現地でつなぎます、重なり部分が膨らまない編み方でつなぎます。最後に端部の処理ですが、バビット加工と言う、加工をします。これはメガホンと同じような形をした、鉄製品でメガホンの大きな方に ピンを通す耳が付いた形をしています。ワイヤーを口に当てる側から入れ、ワイヤーをほぐし、メガホン内でラッパ状にします。そこに溶かした、たぶん鉛だと思いますが、ほどを焚き鉄ビーカーで流し込み冷え固まればOKです。

いよいよコンクリート打設です。

機械屋さんは各々試運転が始まります。コンベアー側で難儀するのは、乗り継ぎホッパーに骨材が乗り移るとき、骨材(石)の大きさが20㎜から200mmまでありますから、違う放物線を描き、コンベアーから落ちて次のコンベアーのベルトの中心に乗りません。また各々コンベアーが直線でありませんから、なおさらです。中心に乗らないとベルトが片側によってNGです。ホッパー内に整流棒を(2m位のレール)各々のサイズの石に対応できるように、ぶら下げてどんなサイズでも、中心に乗るようにします。下手をすると一日かかってもダメな日があります。

バッチャープラント(骨材とセメントを混ぜコンクリートにする設備)と、ケーブル式搬器とインクライン式搬器はそう問題が起こりません。

いよいよコンクリート打設です。いきおい機械屋さんは暇になります。
試運転が終わっていますから、動作には問題がありません、ただ引き渡しが終わっていないので、運転は機械側でやります。土建屋さんためし打設で、いろんな骨材のコンクリートを試験しますので、1日1H程が2回あるだけです。はるか下で、土建屋さんが、ありんこの様に、せわしなく動きコンクリートの圧縮試験等の実験の為のテストピースを作っています。サイトにプレハブ小屋を建て、そこでコンクリートの科学的試験を行います。
ですから1日本稼働じゃないので、機械がフル運転しないのです。

暇な時、何をやるかと言うと、カブトムシ取り。町に降りて行き、小学生をアイスキャンディ1本で買収し、翌日カブトムシをもらいます。
もう工事終了ですから プレハブ小屋の壁べニアをはがし ガムテープでカブトムシ入れを作ります。試運転時事には設計者やら、完工祝い目当てのお偉いさんや来客が多いので、お土産です。デパートで買えば1万はする、カブトムシがアイス1本で手に入ります。

植木屋を数週間・立ち退いた家後に行き 植木の取り。これはゼネコンからもぜひと言われます。植木は流木の原因になりますから抜き取りOKです。早い者勝ちと・良い物は移植されている、移転者がマンションだったりすると、結構良い木が残っています。本格的になると4トン車にクレーンが付いたユニックと言う車で クレーンでつり上げ持って帰る強者もいます。

あとは温泉・温泉ですね。ひなびた温泉へ行くと大体1日客が来ないような所は 1万円を持っていけば おつりが無いので ただ(笑い)
露天風呂に 木の輪切りした物が浮かんでおり、そこにビールやらつまみを乗せ、歌の一つも歌います。

後日談
所長として行った 玉川ダム(秋田県仙北郡田沢湖町)で、機械側の試運転後時間が空いたので、千葉まで戻りまた秋田へ戻るときの話です。まだ大宮から新幹線に乗る時代、新幹線の中で隣の人が話しかけてきた、仕事の話になって彼は自衛隊のパイロットだったのです、ファントムに乗っているそうです。乗る?私の話をしたら「遊びに行きます。」戦闘機は20km先の見える大きな物でないと目標にならないそうです。ダムはちょうどいいと言っていました(彼は小牧から 三沢に転勤だった)あそこは今から40年くらい前 全日空と自衛隊機がクラッシュした付近だった。
現地到着後数日して 戦闘機が編隊を組んで飛んできた。一機が河床すれすれに飛んできて、羽を揺らしながら、ダムすれすれを躱していった。私はゼロ戦パイロットを送るように、ヘルメットを振った。

2013/10/27
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