ルージュの伝言
東田
 

チョット前のこと。
某有名自動車会社のテレビコマーシャルで、
彼女が彼の愛車の窓に「Good Bye」とルージュの伝言を残して去って行く。
彼女はすでに車中の人となり、ぼんやり車窓を眺め哀愁に浸っている。
その列車が走る線路には、寄り添うように長く続いた道路がある。

そこへ彼が愛車に乗り、列車に追いつき車中での彼女を見つける。
彼女も列車と並走している彼の愛車を見つける。
「私に最後のお別れを言いに、ここまで来てくれたのね!」と
喜びの表情となり思わず立ちあがり、窓を開ける。そして彼も窓を開ける。
しかし、彼は自分の愛車のルージュで描かれた窓を
指差し「拭けよ!」と叫ぶ。彼女は「???」という表情でカットとなる。

私の娘が笑った・・・
彼女はショートコントのように感じたのだろう。
一般的にはこれは単純なオチのコントと思われているようである。
作者の意図もそのようである。

しかし、私は思う。窓に描かれたルージュを拭くことは、
わざわざ愛車を飛ばして、列車に追いつき、
彼女に訴えるより、自分でサッサと拭く方が簡単で楽である。

私は彼がやっぱり彼女の事が好きで、戻って来て欲しいので、
「拭けよ!」と言う短い言葉に「こんな別れ方はないだろう。
次の駅で列車から降りて、俺ともう1度やり直そうじゃないか!」
と言う気持ちを込めて叫んでいるのだろうと思うのである。
いや、そう、思いたいのである。その方が「ええ話」ではないか・・・
もし、作者の真意が本当にコント仕立てなら、
これでは、ベタでつまらん「オチ」のコントである。

私が作者なら、いっその事、彼のマーティンのトップに真っ赤なルージュで
「私とギターと!どっちが大事なの!この!ロクデナシ!」と書かしたい。
もっともこれでは彼が彼女に追いついた後の展開が
殺人事件へと発展するので、CMには使えないが・・・
まぁ、それだけの話しなんですけどね・・・
そんなオヤジの独り言・・・


2002/12/19
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