2005年1月1日
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「D-28との出会い」
 
(染村哲也/44歳/埼玉)
 

私はマーティンD-28が好きなのですが、D-28との出会いを思い出してみました。

私がギターを始めたのは中学生の時、日本のフォークを弾きたくて始めました。そのときのあこがれのギターはマーティンD-45でした。伊勢正三やさだまさしの弾くD-45の音や美しい貝の装飾に憧れていました。

当時は石川県金沢市に住んでいたのですが、マーティンギターが置いてある楽器店はほとんど無く、おそらく金沢で1台だけ、U書店の地下の楽器売場にD-28が飾られていました。いつもショーウィンドウ越しに見ては、どんな音がするのだろう、と思っていました。

その後、高校生の時にギター教室に行き、そのときの先生の紹介で初めてブルーグラス・ギターを知り、自分にとってアコースティック・ギターの可能性が広がったような気がしました。いろいろなレコードを買い、ブルーグラスの事を知るにつれ、素晴らしい演奏をしている本場アメリカのプロ・ブルーグラス・ミュージシャンの殆どがマーティンD-28を弾いていることに気づきました。ブルーグラスにのめり込むにつれ、ギター=D-28という図式が出来上がってしまったのです。

そういうことで、私がD-28と出会い、D-28を好きになったのは、ブルーグラス音楽によるところが大きかったと思います。ですから、私はギターの中でD-28が一番良いとは思っていません。30年近く聞き続けてきたブルーグラス音楽に常にD-28の「音」と「姿」があったので、その音色、そのスタイルが、プロ・ミュージシャンへのあこがれも含めて「好きなギター」となったのです。

今まで色々なD-28を見たり、弾いたり、調べたりしたのですが、今感じることは、D-28というギターは、生まれてから今日まで、変わらぬ姿勢で真面目に作り続けられているギターだということです。最近、マーティン社は様々なモデルを大量に出し過ぎて、ギターの質が落ちているのではないかと思われるかもしれませんが、私は、マーティン社がギターを作る真摯な基本姿勢は、昔も今も変わっていないと思います。

昨年は14フレットD-28が生まれて70年になりました。私は70年前のD-28も好きですが、今のD-28もとても好きです。新しい年が明け、今年のD-28がどんな進化を遂げてくれるのか、楽しみです。


 
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