2005年1月12日
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「時代はめぐる」
 
(おぐ/44歳/東京)
 

いまでもはっきり覚えているのですが、14歳の誕生日に立川のデパートに行きモーリスのF12(当時1万2千円)を買ってもらったのでした。

特に音楽好きという訳ではなかったのですが、ギターを弾く姿にとても憧れて、ねだったように記憶しています。当時、ギターを持っている生徒はクラスに1名か2名くらいだったでしょうか。これで、私も特別な1人の仲間入りをしたように感じられました。

ギターを買ってもらった翌日、赤いタータンチェック柄のビニール製ギターケースにギターをいれて、いつもより早く登校をしました。掃除道具入れにギターを隠しておいたのです。今思うと、ギターを買ったことを自慢したいのですが、自分からいうのでなく友達に気がついてもらいたかったんですね。なんとも子供っぽいです。クラスメイトが「あれ?こんなところにギターがある」というとすかさず「あっそれ俺の」と、さも事も無げに返事をして特別な自分をアピールしたのでした。

そんな私も大学時代にはエレキに触れ、RockやJazz・フュージョンなどの音楽を楽しむようになり、ギター遍歴も大変なものでしたが、いつの時代もギターは私にとって特別な存在でした。

特に、二十歳の時にカワセ楽器でローンを組んで買ったHD−28は数あるギターの中でも特別な存在であり、私と一番付き合いが長いギターになりました。
彼には私の青春が刻まれ、何物にも替えがたいギターとなりました。

いまではイタズラする程度に手癖を爪弾く程度ですが、いつでも手が届くように居間に置かれ、家族を見守っています。
きっと、今はまだ小さい息子達がこのギターを弾くようになるのではないかと思います。

父がこよなく愛したギターを息子が受け継ぐ・・・
なんともロマンチックなことです。


 
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