2008年10月2日
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「イタミドメには、音薬(おとぐすり)」
 
(石井 蒔(まき)/19--年生/東京)


 アラサー、アラフォーという言葉が、ちまたで流行っているが、すでにアラフィフ(?)の声も聞こえそうなこのごろのあたし。思春期の子どもたちに、最近、未亡人となった母ふたり。仕事に家庭にと、肩の荷もめっきり重たくなった。そんな中でささやかな音楽活動を始めるなんて、自分でも笑える。

 去年、連れ合いが仕事の都合で北海道へと旅立っていった。結婚して、東京〜群馬〜宮崎〜東京へと住まいを移し、友達や仕事と別れながら、生活を続けてきて、今度は「なんちゃってシングルマザー」になってしまったのだ。

 さて、これからどうやって生きていくかな、と思っていたら、転居した家の目と鼻の先くらいの近所に、ライブカフェが出来た。下手でもと飛び込んだオープンマイク、昔、教会で毎週弾いていたフォークギター。毎週、ギターを抱えて若い人に混ざって歌うのが習慣になるのも、無理はないかな。ダメ?

 前に、自分で作った歌が好き、と書いたけれど、自信満々なわけではない。なのに、どうしてって・・・?自分で作ったオーダーメイドの歌は、他ならぬあたし自身の痛みに寄り添ってくれるから。

  ♪ 街が目覚めてくる この空はあなたに続いてる

いつも途中で目覚めてしまう朝。そんな中で作った「Morning Song」。

  ♪ 君の街に吹く風 深い海のにおいがする
  ♪ 僕の街に吹く風 君を待ってる

遠くの街から引っ越してきた女の子を慰める「ようこそ この街へ」。

  ♪ ねえ知ってる? 悲しみは海の底で真珠になる

何か我慢しなくちゃならないことが起きたとき、頭の中でこの歌、「風の絵本」がエンドレスで流れてくる。

 遠くで倹しく単身生活を送っている連れ合いに、「ライブばかりやって」と、こないだ怒られてしまいました。ごめんね。でも、やさしい歌を作ろうとしていると、なんだか自分もやさしい人なように思えてくる。そして、笑っているおかあさんでいられる気がする。

 そんなあたしの歌は、あたし自身のささやかな痛み止め、カモシレナイ。そして、まかり間違って、風に運ばれて、誰かのイタミドメになれたら、あたしはウレシイ。
  



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