2015年5月26日
<エッセイ一覧へ>

「タッチャンのこと」
 
(tsukaping/1955年生/静岡)


長い間触っていなかったギターをまた触りだした昨今、昔一緒に組んで弾き語りをした相棒ことを時々思い出します。
同じ歳のタッチャンと言う彼とはギターを始めた時も一緒の頃であったし技量も同じくらいで、何よりおっとりした性格の彼とは非常に付合いやすく、よく僕の家で深夜までギターを弾きながら歌ったりダベったりしていました。
僕等は吉田拓郎の曲から覚えたのですが、間もなく井上陽水の曲にシフトしていき特にアルバム「氷の世界」に入っていた曲には二人で入れ込みました。
僕ではあまり上手く歌えないヶ所も高音域の声が出るタッチャンの方がメインに歌い、ハモリの練習とかして、僕らの当面の目標は町内の夏祭りに出て演奏することでした。
半年くらい一緒に練習しましたが、徐々に僕の音楽の好みが変わっていき、タッチャンに時おり僕好みの「シュガーベイブ」の曲などを付き合わせたりしていましたが、お互いのノリも悪く徐々に冷めていくのを感じました。
目標だった夏祭りの日も近づき何の曲でエントリーするかで二人の意見が別れましたが、おとなしいタッチャンがこの時ばかりは一歩も退かず、彼の希望する「ふきのとう/君によせて」を演ることにしましたが、僕のモチベーションは下がったままでした。
そんなに難しい曲ではなかったので大した練習もしないでイザ本番となりましたが、メインで歌う彼の声が意外なほど伸びがあり、タッチャンってこんなに上手だったのかと感心したことを覚えています。
それを機に僕は新しい仲間と組むことになり、タッチャンともあまり合わなくなりました。

程なく僕は付き合っていた彼女との結婚/出産/仕事でギターからも遠ざかってしまいタッチャンの存在すら忘れていってしまいました。
還暦近くなってギターを再開すると何気なしに弾いてしまう曲が、タッチャンと一緒に組んでいた頃に練習した曲で、好きだったシュガーベイブなどはコードとかまるっきり覚えていません。
タッチャンは今どうしているのだろうか、ギターを抱える度に彼のことを思い出します。
ギターのハードケースにはGood by 1976のタッチャンの書いた落書きが今も消えずに残っています。



エッセイ一覧へ→
トップページに戻る→