手紙
BABU
  

もう23年程前になるのか、友達と3人で猪苗代湖へ遊びに行き観光荘という旅館で泊まった時の事、シーズンオフとあって僕たちの他に泊り客は居なかった。夕食後部屋でのんびりしているとご主人から居間にどうぞと呼ばれた。

たわいもない話をしていたんだと思う。
話の最中に順番にお風呂に入っていた。
自分が風呂から出てくると、

友達・・「早く!早く!電話出て!」
私・・「・・・・?・・もしもし・・・」 
誰かさん・・「あ!こんばんわ〜」

受話器から聞こえて来たのはまだ若そうな女性の声だった・・
ご主人も友達もいいから、喋って!喋って!のポーズ・・

私・・「(?_?)え?」
女性A・・「あ!私、観光荘の嘘の娘のしのぶと言います、そちらは誰ですか?」
私・・「え!あ!澤柳 高嗣・といいますハイ・・?」

なにをどう話したか良く憶えてはいないのだけれど・・。

数日後しのぶさんから手紙が届いた。
女性から手紙を貰う機会がない私にはとっても嬉しい(@⌒∇⌒@) ニョホッホッ♪な事件でした。

手紙に書かれていたプロフィールによると彼女は中学3年生。
2歳下の見知らぬ女の子との文通がその日から始まりました。
数ヵ月間日常の出来事のやり取りした頃、受験を迎える彼女からしばらく手紙はお休みして勉強に頑張りますとの事。
受験のお守りを送って無事に受かることを願っていました。

ある日電話のベルが鳴り「受かったよ〜(*^ー゜)v」 と観光荘で聞いた以来の彼女の声。周りに友達でもいるのか・・きゃ〜きゃ〜きゃぴぃと賑やかだった。
でもその後文通をすることは自然となくなっていきました。

それから5年後何の気なしに彼女に手紙を書いた。
5年間の空白・・もしかしたらもうそこには住んで居ないかも・・
届かなかったら届かないで仕方がないかと思いながらポストへ・・・

毎日彼女からの返事を待ちながら郵便受けを開けていました。
そんなある日待ちに待った返事がきた。
女性らしい封筒に、懐かしい便箋の折り方、途端に5年前の空気が漂う・・

その手紙には、中学を卒業してからの出来事が書かれていた。
今春短大を卒業し保母になると。
一度も会ったことはないけれど、
きっといい先生になるだろうなという確信が私にはありました。

きっと彼女は今でも子供たちに囲まれているんだろうな。

今は携帯やパソコンの普及で手紙でなくメールの時代・・・
返事が遅れると不安というかイライラするというか・・・
一語一句気をつけながら書いた手紙が・・あの頃が懐かしい・・・
もう少し・・もう少しでいいから・・時間よゆっくりまわっておくれ・・。


2003/11/23
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