2004年9月12日
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「高級ギターに関する考察」
 
(yoocho/48歳/東京)


金銭的考察

かつてマーチンは、ギターを弾く人間にとって特別なものだったように思います。
特にマーチン、ギブソンはプロを目指す人間の必須アイテムというイメージが強かったように感じます。

1975年当時の大卒初任給は8万円前後だったように記憶します。それから考えると、当時の30万円はたぶん4〜5ヶ月分に相当したはずです。それだけにマーチン、ギブソンを購入するには非常に勇気が要りました。

自分がD-35を購入したのが18歳の時、今から丁度30年前になりますが、当時34万円のギターを3年月賦で月々12000円程度の支払いで購入した様に記憶します。毎月アルバイトをして返す約束で、親に出してもらったのですがその当時のアルバイトは自給300〜400円貰えれば良い時代、単純に3日分のバイト料が飛んで行った訳です。(小生の場合、結局踏み倒しましたが・・・)

今は時給800円以上が普通、ですからマーチンの価値は今の倍、たとえばD-28やD-35で考えると70万円くらいの楽器を買う感覚だった事になります。そういうことを逆に考えると今は、値段が半額になっていると考えた方がいいのでしょう。

今、40代を中心にマーチンをはじめとするギターを買うブームみたいなものが起きていると新聞等で書かれたりしていますが、若い頃に手が出なかった理由や、今になって手が届く値段になったという事が理解できるかと思います。


音的な考察

マーチンを買った理由はもうひとつあります。

当時はフォークソングブームも手伝って、ヤマハやヤイリでも高級ギターを販売していて、かなりいい音を出すギターがありました。自分もヤマハ、ヤマキ、グレコを所有していましたがお茶の水のカワセ楽器に行って、初めてマーチンの音を聞いたときに音質の違いを強く感じました。

マーチンに関しては、このサイトでも皆さんが特徴をお話しているとおり、機種によって個性が違い、使う側にも好みがあったように思います。では国産のギターではどうだったか?個性があったギターはヤイリのドレッドノート(機種名は忘れました)くらいで、他は似たり寄ったり。同じ機種でも当たり外れが大きかった事でしょうか?

良いギターは基本的に大きな音が出ます。国産のギターもマーチンやギブソンに遜色ない、いい音を出していました。ところが、ライブ録音やデモテープを作ってみるとその違いがはっきりと出ました。

マーチンはギターの音の中に弦1本、1本の音がはっきり認識できましたが、国産ギターではこういった音は聞こえない。あの当時マーチンの特徴は高音の弦の響きを鈴の音と称して崇められていましたが、まさにそれはこういった時に露骨な差が出ました。

もうひとつ、国産ギターは年数が経つと枯れていい音にはなるのですが、前出の音量は小さくなるように感じます。これは材質、日本の気候から来る湿度等が大きく影響するのでしょう。マーチンはそれに反して、古くなると楽器の特徴が強くなる。D-28はより男性的に、D-35はより女性的な魅力的な音を出すように変わります。(これはつい最近、感じるようになった実体験です)。


結論

どんなものに関しても言える事ですが、マーチンは「格が違う」という一言。

食べ物で例えれば、おいしい食事はおかずの素材が重要ですが調理方法でも味に差が出ます。マーチンを食べ物に例えると、おいしいお米。本当に美味いお米は梅干一個で十分。むしろご飯だけでも食べられる、おかずが要らない。

超高級バイオリンのストラディバリウスにも共通しますが、高級ギターとは、値段相応のパフォーマンスが何十年も続くギターということではないでしょうか?


 
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