2004年11月11日
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「突発的行為、私の場合」
 
(なみお/36歳/沖縄)


実は数年前まで7万円以上のギターは所有したことがなかった。

私の高校時代の友人にギターの先生がおり、「エレキは5万円で十分、高いギターなんて必要ない。」とのたまったのを聞いて、楽器に金をかけるのはばからしいと感じていた。

時は過ぎ、30もこえ、家庭もでき、しかし仕事は狂ったように忙しく連日徹夜の日々、当時職場はお茶の水にあり、ちょっと歩けば楽器屋が所狭しと並んでいた。その日は本当にどうにかしていた。おそらく働きすぎて頭がおかしくなっていた。ロックばかりやっていたのに、なぜか急にフォークギターが弾きたくなって、楽器屋を尋ねた。

最初に行ったK楽器、マーチンの部屋?へ行くと、私の身なりをみた店員は楽器に触らせなかった。しまいには「あんた買う気あるの。」と言われ、うなだれて出て行かざるを得なかった。しかし、さらに頭は狂って60年代サイケを彷彿とさせる夢幻状態に陥っていた。下○楽器に入り、「一番高いギターはどれよ。」と聞いた。すると、愛想の良い20代の店員が「あの一番上の壁に掛かってますよね。あれですよ。」(おめーマーチンもしらねぇのかよ。)と今振り返れば彼はつぶやいていたかもしれない。「あ、そ、じゃそれちょーだい。現金ないけど、カードでいいの?」

出産のため、沖縄の実家に戻っていた妻は電話口の私の様子に異変を感じたに違いない。「なんか声が高ぶってるけど。」「実は、、、」とその日の出来事を話した。幸い妻は怒らなかった、出産という大仕事の合間に私の無茶を聞いても「よかったね。いい音するのね。(あ、ちょっと話しを作ってます。)」と言ってくれた。

しかしかえってそれが怖かった。その後、ケースからギターを取り出し音を聞いたところ、ぶっ飛んだ。「なんちゅういい音やねん。(大学時代の名残で関西弁が出ちゃった)」その夜、近所迷惑も顧みず、Eコードのブルースを弾きまくった。気持ちよかった。

私はその日以来、良い楽器は練習意欲を増幅させることに気づき、学生時代挫折したジャズに再度トライすることとなった。いまではもどきながら、ビックバンドでフレディーグリーンの4つ刻みをして、ウエスモンゴメリーを3分の1倍速で弾けるようになった。ありがとう、高級楽器のマーチン、以来、×0万程、ギターに金を使い、貯金はすべてなくなりました。だれか助けてぇ。。。。

まったく筋のない後日談
先日、愛器のマーチンにピックアップをつけてとある結婚式で「Stella by star light」を弾きました。みんなジャズは知らないのですが、「いい音するねぇー。」と褒めていただきました。(だれも、うまいねぇとは言ってくれませんでした。)


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