2005年1月28日
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「きっかけは・・・・」
 
(toku/46歳/青森)
 

あれは・・・中学校1年生のとき。
卓球部の部活が終わり、音楽室隣の水呑場に向かう時だった。
何時もは放課後に居残った女子たちが、「ネコフンジャッタ」や「猫踏んじゃった」や、はたまた「ねこふんじゃった!」・・・・・・「お願いですから、他の曲もおねがいしますっ!!」と言う状況だったが、その日は何か違っていた。

「ピロピロピロピロリン」だとか「テロテロテロリョン〜ピロ」だとかと違う音が音楽室から流れている。否、流れていると言うよりも漏れ聞こえている。明らかにピアノの音量よりも小さい。しかも何か唄っているし。
「ジャ〜ンジャッカジャカジャ〜ン」と何かを掻き鳴らす音と「$#&‘&%%$%&&%$!んgしjびじゃあ〜〜〜ん」(ドア越しなので言葉が聞き取れない)と誰かの歌声。怪しすぎる!

好奇心に駆られ私(卓球部 身長170cm 体重80k 肥満児)は、意を決してドアを開けた。其処には、剣道部のタカハシ君(仮名)と同じく剣道部のフルヤ君(同仮名)がギターを小脇に抱え、机の上に小粋に腰をかけながら何やら演奏していた。

「おー!タカハシとフルヤ どうしたのそれ?」私は聞いた。「どうした?」と聞いたのは、タカハシ君もフルヤ君も私同様、堂々たる巨躯、そして鼻が頬っぺたにめり込むくらいの超丸顔。音楽や楽器などと言うセンシティブな趣味を持つとは、わたしには考えも及ばなかったのだ。

「あぁ?買ってもらったんだ。」と言いながらタカハシ君とフルヤ君は「明星」の歌本を広げ、ギターを弾きながら唄っていた。その姿がなんかちょっと「カッコイイ」感じがした。

この出会いの以前にも私は、GS流行時に従兄弟のおにいちゃんの部屋のあるセミアコを触ろうとして拳骨で頭を叩かれたり、自作オーディオが自慢の叔父さんが、大型スピーカーから朗々と流れる古賀メロディにあわせて弾くクラギを、「ジジ臭せ〜」などと思いながら聞かされていたりと、ギターとの小接近は何度か有った。しかし同世代の人間がギター。其れも鉄弦のギターを弾く姿は私にある種の衝撃を与えた。

「俺も欲しい!」「俺も欲しい!」「俺も欲しい!」・・・・ギターっ!の願いは音楽に無理解な両親の前では、全く報われることは無かった。考えてみれば、小さい頃から体育会系で、芸術方面では通信簿1又は2しか取ったことの無いデブに、ホイホイギターを与えなかったことは、両親の賢明な選択ではあったと思う。

初めて自分のギターを持つのは高校入学、お祝いに買ってもらう事になるのだが、其れまでの3年間が狂おしいまでの時間であった。
初めてギターを欲しいと思い込んだ中学1年生。時は1970年。ハードロックの芽生え・アングラフォークからメジャーフォークへの時代、道央人口3万人の炭鉱町のその又田舎に住む私は、そんな事は全く知らず、尾崎紀世彦を唄っていた。

ギターを持った高校時代、一生懸命練習に励みフォークソング部へとは成らず、やはり体育系バレー部での3年間。一生懸命ギターを練習はしたが人前での披露は学校祭での1回だけ。しかもギターではなく何故かベース、もう何がなんだか非常に情け無い思い出。しかし学校祭とは言え大勢の前での演奏経験は忘れられない想い出になり、大学卒業まで数回の舞台経験をする事になる。

社会人になると音楽熱は何処かに置き忘れたようになり、手元にギターは有るが全く弾かない状態は30歳中半まで続いた。小学生以来続けていたスキーで酷いギックリ腰を患い、「俺も若く無いな・・・フッ」と思った時クローゼットの上で埃が5ミリ位積もったハードケースが目に付いた。「身体動かねーし、久しぶりギター弾いてみっか・・・」10年強空かずの扉をあけてみた。

もうボロボロです。指、動かん!痛い!曲忘れてるし、思い出せないし。ギターフレット青錆だらけだし、弦赤錆だし。しかしです、気持ち良いんですね、心地良いんですね、ギターの音色が。一瞬腰の痛いのも忘れてしまいました。

其れからはスポーツほどほど。スキーの用具代はギター費用に変換されて行きました。ギブソン・フェンダーなんぞ有名どころを昔知識だけで触ることが適わなかった品々を次々と買ってしまいました。今では部屋にEギター3台アコギ2台ベース1台ととんでもない事になっております。

えっ?マーチンはどうしたですって?
始まりがアコギからなので、未だ恐れ多いの感が強く、購入に至っておりません。だってあれでしょう?マーチンってプロの方が弾く楽器でしょう。俺もいつかはマーチンと思い、アコギは国産を使っています。意識は30年前と同じ。そう思っていると良い歳をしたオヤジの自分にも、限りの無い未来がある様な気がしてきます。

私にとってマーチンは浦島太郎の玉手箱かパンドラの箱みたいなものでしょうか。


 
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