2005年3月20日
<エッセイ一覧へ>

彼女が残してくれた詩
 
(はた坊/45歳/千葉)
 


いつからだろう、時の経つのがこんなに早く感じるようになったのは・・・

ハーモニカも縦笛も吹けなかった僕が、ギターを手にしたのは確か中学2年の夏。
友達がキャンプに持参した井上陽水の「氷の世界」をテントの中で聞き衝撃を受けた。
飽きっぽい僕が、なぜかギターだけは続いた。
きっと、初めて自己表現ができるものと出会えたからなのかもしれない。

その出会いが、さらに素晴らしい仲間達との出会いを生んでくれた。
高校時代に初めて組んだバンド仲間・・・楽しい時間が過ぎていった。
当時、思うがままに綴った詩を読むと恥ずかしさの中に純粋だった日々が懐かしく思える。

大学時代に出会った音楽の仲間達・・・皆違ったジャンルの音楽を楽しんでいた。
いつしかオリジナル曲を作り歌うようになっていた。
そして素晴らしい感性を持った女性と出会う。
その詩の虜になった。
へたな曲を付けてみたが、思うように歌えなかった。
当時の僕には、彼女の詩を理解しきれなかったに違いない。

突然の彼女の死。
今からちょうど13年前の春、自殺だった。 
彼女からもらっていた幾つかの詩の原文を、彼女の両親に渡し涙する姿を見た時、何も知らず何も出来なかった自分を叱責した。
自然に彼女が書いた曲から離れ、ギターを手にする時間も減っていった。

何年もの時を経て、一昨年の冬に突然彼女の夢を見た。
目覚めた時、うろたえている自分がわかった。
なぜだろう?なぜ突然夢を見たのだろう。
何の伏線も無かった。
そして、結論までに時間は掛からなかった。
もう一度歌おう。へたな歌だけれど皆に聞いてもらいたい。
彼女が生きていた証として・・・

それから、独学で学んで来たギターをもう一度しっかり勉強してみようと、今更ながらギター教室に通い始めた。
そこで、また素晴らしい出会いがあった。
「しっかりしとした形に残して、また新しい世界にチャレンジすればいい!」とアドバイスをいただいた。
それから、15年振りに人前に出てギターを弾いた。
彼女の誌によるオリジナル曲を中心にしたライブを再開した。
録音した曲を聞き返すと『あ〜なんてへたなんだろう。
上手い人に歌ってもらったら、もっとましな曲になるのだろうなぁ・・・と思ってみたりもするが、やはり彼女とのヒストリーは僕でしか判らない。

だから精一杯心で伝えよう!彼女が残してくれた詩を・・・』

 
エッセイ一覧へ→
トップページに戻る→