2006年3月13日
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「ギターのチカラ」
 
(Kaze/46歳/愛知)



 「おーい,今日は時間があるから,あとで学校にギター持ってこい」
こんな会話が数ヶ月間続きました。そうなんです。私は中学教員なのです。おうちゃく坊主たちに夜,ギターを教えていました。

 私の所属している学校の3年生はとても上品な生徒たちが多く,私とのつかみ合いはよくあることでした。物は壊れ,放課も休憩などできない状態でした。そんな荒れた生徒たちの心を開いたのがギターでした。

 きっかけは,昨年の文化祭で吹奏楽部に発表でエレキギターを頼まれて弾いたことです。ドラマ「電車男」の主題歌の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」でした。(本当は私はアコギ好きです。)演奏が終わったあとに,おうちゃく坊主たちが「先生かっこよかったよ」と声をかけてくれました。それからしばらくして,茶髪の生徒が恥ずかしそうに「先生ギター教えて」と私に頼みに来ました。その生徒の後ろの方には二人の生徒がようすをうかがっていました。けじめをつけるために教えるのは夜だぞ,と念を押して了解しました。中学3年生の冬,受験のことは頭にない(?)生徒たち・・・・。それぞれの担任の先生方に遠慮しながらも教えていました。(私は学年主任で担任するクラスはありません)

 アコギ組の2人にはスピッツの「空も飛べるはず」,エレキとベース組の3人にはバンプオブチキンの「天体観測」の楽譜を用意しました。普段のつり上がった目とは違って,かわいらしい子供の目。真剣な表情。悪ガキ5人は昼間のようすとは全く違っていました。最初の1回で,ようすが変わってきました。それ以前にもよく話を聞いてやったり面倒を見ていたのですが,なかなか心は開きませんでした。しかし,ギターを教え始めてからは,他の生徒の目を気にしながらではあるけれど,素直にこちらの指示に従うようになりました。悪さをしても謝らなかった彼らも,私の顔を見るとすいませんと謝るようになりました。

 「ギターのチカラ」ってすごいなぁと思いました。音楽は世代も何も関係なく心を動かすものだと再び思いました。 再びというのは,ことあるごとにギターを弾いてきたからです。文化祭でもそうですし,キャンプファイヤー時の伴奏。また,クラスのレクリとして生徒とバンドで演奏したり,卒業式の日に弾き語りをしたり・・・・。そして,道徳の授業をギターの弾き語りで聴かせ,その歌詞の内容で授業を行ったりもしました。そのときどきに生徒の気持ちをつかめてきたのは「ギターのチカラ」です。

 今愛知県の春日井市で仲間とギターを弾いてます。ほぼ毎週水曜日に,若い人たちと小さなバーでワイワイと演奏させてもらってます。近隣の方ご一緒にどうですか。

 
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