2006年8月17日
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「蕎麦を打つより、弦を張れ!」
 
(鉄弦の音三郎/49歳/埼玉)



私と鉄弦ギターとの出会いは、もう33年前になります。それは高校の同じクラスのN君の弾くS&Gの「4月になれば彼女は」と「キャシーの歌」を聞いた時でした。当時、S&Gは私の大好きなグループでした。それまではフラットピックを使ったコードストロークしか聞いたことがなかった私の目の前で、スリーフィンガーによる華麗なピッキングを披露してくれたのです。信じられないような指の動き、ナイロン弦と全く違う音の響き、鉄弦の美しさに感動したのでした。それから約1年後、ギターを始める決心をして、N君のモーリスギターを借り、練習を始めました。

それから、P・サイモンのコピーに明け暮れる日々が高校3年、浪人、大学時代と続きました。そんなある日、ある教則本に「P・サイモンは元ペンタングルのバート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンから影響を受けている。彼らを聞く事。」とあり、早速レコード屋さんへ。当時、かれらのアルバムは東芝EMIから国内版がでており、「ギタープレーヤーの聖典」という帯びが付けられたものでした。最初に聴いたのは「Bert and John」。彼らのスタイルは私の想像をはるかに越えていました。アラブ、インド音楽、ジャズ、ブルース、教会音楽、クラシック、トラッド、カントリーとまるで万華鏡のような曲が並んでいたのです。様々な音楽要素を坩堝にいれて焼き上げたような音楽でした。以来、彼らは私の師匠であり、憧れであり続けています。

社会人になった頃は更にビートルズなどのポップロック、ブルース、ラグタイム、ブルーグラス、カントリーの分野にも分け入り、戦前録音されたレコードなどを聴き漁り、鉄弦ギターとの関係の奥深さと広さを思い知るのでした。そんな折、15年位前になりますが、アマチュアのアコギサークルにも参加し、まだ東京にいたラグタイムギターの浜田君の演奏も目の前で聴いていました。浜田君とはステファン・グロスマンのコンサートで今年4月久々に再会できました。

そして現在、私もオヤジと呼ばれる年齢となり、好きなギター、好きな音楽をやり続ける決心をして、応援団のメンバーになりました。ギターを愛し、音楽を愛し、人生を愛する仲間と一緒に何かをやれる幸せを思い切り感じています。

私の場合、「蕎麦を打つより、弦を張れ!」なのです。



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