「自転車泥棒」
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(ちゅーりん/1957年生/神奈川) |
昔話で恐縮ですが・・・、1983年の夏、循環器系の病気の手術の為、長崎大学医学部付属病院に一ヶ月ほど入院していた時、同室の東久米佐(ヒガシクメサ)さんという人と妙に気が合い、親しくさせていただきました。入院中は、病院内のサテンでCoffee飲んだり、隠れてタバコを喫いに行ったり、久米佐さんの満州時代の話や、私の好きな古い映画の話で盛り上がったりで、あっという間に別れの日は来ました。私の退院が決まったのです。
その日、寂しそうな久米佐さんにどんな言葉をかけて良いかわからなかった私は、苦しまぎれに、当時作ってはカセットテープに録音していた自作の歌を初めて聴いてもらいました。久米佐さんはなかでも「自転車泥棒」という歌をとても褒めてくださり、「これはよか歌ですねえ、こん歌ばユタカにも聴かせてあげたかですけど、私も息子にはだいぶ会うとらんとですよ」とおっしゃっていたことを最近思い出しました。
私がお会いした頃の久米佐さんは末期癌で、もう何年も入退院を繰り返しており、その年の秋にお亡くなりになったことを奥様の手紙で知りました。あの時私は二十六歳で、あれからもう二十七年も過ぎてしまいました。
今年の七月にAPIA40という都内のライブハウスに私が出演したのは、APIA40がもともと「東京キッドブラザーズ」の常打ち小屋「HAIR」だったからです。そこで歌えば久米佐さんとの約束が果たせるかもな、とふと思ったからです。その夜、私の「自転車泥棒」は二十七年もかけてやっと、東由多加さんに聴いてもらえたかもしれません。
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