2016年2月7日
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「GAS」
 
(玉野井/1955年生/神奈川)


偶然(10年程前から)私の勤務先は世界一のギター密集地、御茶ノ水にある。還暦を越えた私にとってアブナイのは中古で、目の前でこれだけ流通しているとつい手が出る。店員もこの客は買うとみれば楽器もろとも巧みに持ち上げるし、60回ローンという悪魔の囁きもあるから金欠者でもとりあえず欲しいギターは手に入る。

世界中のギタークレイジーが自嘲気味に使う、GAS(ガス:guitar/gear acquisition syndrome)という言葉があることを最近知った。直訳すれば収集癖だが、ギターとギアの頭文字が同じなのがミソで、「あんたも私も、もはや立派なGASじゃわぃ…」ってなぐあいに使うらしい。

(話は飛ぶが)この前、ランボルギーニ・カウンタックに乗った。乗ったといっても展示車の座席に座っただけなのだが、5リッターで二人乗り、4千万円もする車だ。固めパンパンの革張りシートに沈み込んでシフトレバーを握ったら別世界が見えた。これだけの怪物になると車も魔物だとつくづく思った。

いやはや、マイ・ギアが車でなく、ギターでよかった。身の程ということだろう。
 
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