2018年5月22日
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「古き良き愛器と共に」
 
(LiL iO/1958年生/東京)


初めて手にしたのは、高校一年の夏の終りでした。

中学で拓郎と出会い ギターを始めた自分。親にスズキ製のギターを買ってもらい、毎日毎日弾いていた。そして高校進学、迷わずフォークソング同好会に入会。そこで先輩が手にしていた1本のギターの音に衝撃を受けた、それが Kヤイリとの初めての出会いだった。

それからは、そのギターのことばかり考えて欲しくて欲しくてたまらなくなり、夏休みにほぼ毎日アルバイトをした。夏の終わりに手にしたお給料が確か4万円ほど。ヤイリには、手が届かない。そんな自分を見ていた姉が助けてくれることに、、、。
そして 夏休みの最後の日曜日、姉と二人で栃木から電車に乗り 初めての御茶ノ水へ。何軒かの楽器屋さんに入り緊張しながら品定め、最後に入ったカワセ楽器でついに買ったKヤイリ YW600。 嬉しくてたまらなかった。

それから2年後、高校最後の年。ある 一枚のアルバムに出会い、やりたい音楽が180度変わった(クラプトンの461オーシャンブールバード?)。それまで毎日弾いていたヤイリから、手にするようになったギターは、グレコのストラトモデルに変わった。

そして イーグルスとの出会い。大学でのバンド活動も手にするのはエレキばかりで、ヤイリはケースに入ったまま押入れの中に、、。その後 大学中退、社会人になり家族を持ち、いつしか音楽から遠く離れた。

そして 30年後 二番目の孫が小学校のクラブで軽音に入り、ある日、ギター弾きたいと突然言ってきた。孫の頼みとあって、押入れの中からギターケースを30年ぶりに出して開けた瞬間、愕然とした。弦のサビは、予想していたものの、ネックは元から剥がれ 、エンドピンの板は割れて瀕死の状態だった。慌てて知り合いのリペア業者に入院させた。完治はしなかったが弾ける状態で手元に戻ってきた。早速 弦を張り、恐る恐る弾いてみた。30年ぶりにもかかわらず、あの音が蘇ってきた。嬉しくて涙が出てたまらなかった。

それからというもの毎日爪弾くようになり、昔の感覚が戻ってくると、同じ気持ちを持つ仲間たちと一緒にやりたいと思うようになり、現在は相方も見つかりデュオとして活動しています。
そして 色々な方に出会ってみると、皆マーチンやタカミネ等のギターを弾いている方がたくさんいます。時々、マーチンを買ってみようかと思ったりするが、いざとなると、やっぱり長年共にしているヤイリから離れられない自分です。
かれこれ45年共に来たKヤイリ、多分、これからもこの一本を大事にしていくだろうと思う。

 



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