「元テクノ少年はクロスロードを目指す」 |
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(おーつか/1971年生/神奈川) |
僕にとっての音楽の洗礼は小学生の頃、80年代のニューミュージック、ニューウェーブでした。オフコースや山下達郎、大滝詠一、ユーミンにRCサクセション、松田聖子、、、そしてなんといってもYMOです。当時はテクノポップが隆盛を極めていました。当然最初に手に入れた楽器はギターではなくシンセサイザーでした(それも単音しか出ない初期のアナログシンセ
)。小学校の卒業文集に寄せた好きな言葉に「テクノ」と書いたのを覚えてます。
ところが中学生になるやロックや洋楽の好きな仲間が出来てあっさり「ギターの方がカッコイイかも」と転向します。ヘビーメタルやパンクロックの時代です。弟が先に買ってきたフェンダージャパンのストラトキャスターを借りて練習するうちにロックギターに開眼しました。「ロックギターなら三大ギタリストを聴くべし!」とロック通の友人に教えられよく分からないままにエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ(レッドツェッペリン)ジェフ・ベックなどのレコードを漁るようになります。なので満を持して最初に買った自分のギターは中古のグレコのレスポールモデルでした。
すると今度は「ギタリストならブルースを聴くべし!」と天の声が聞こえ、クラプトンが最も影響を受けたという伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンにたどり着きました。西新宿のレコード店でカントリーブルースというジャンルを知り、ここで初めてアコースティックギターに興味を持ちはじめます。ギター一本だけでまるでバンドのようなリズムとフレーズを同時に繰り出すカッコイイ音楽、戦前の大昔の音楽が僕の耳にはとても新鮮に、衝撃的に響いたのです。また英国のトラッド、アイリッシュフォークやカントリーギターの名手チェット・アトキンスのラグタイムギターを知ったのもアコギ、フィンガーピッキングの世界への入り口になりました。
インターネットも無い時代、雑誌やレコードのライナーノーツから得た情報を頼りに中古レコード店に通う日々です。高校では軽音楽部に入り初めてバンドを組みます。当時バンドブームで大人気だったブルーハーツやボウイなどのコピーバンドを(モテたいために)しつつ、ビートルズのコピーバンドを(こちらが本命)並行して、家ではステファン・グロスマンの教則本を開いてモーリスの安アコギでブルースの練習をするという節操のない、いささか分裂気味なギター漬けの学生時代でした。
大学に入ると、いわゆる渋谷系と呼ばれる洗練されたJポップ、ロックの波にどっぷりと浸かりながら洋邦楽、新旧、ジャンルを問わず知らない音楽からなんでも聴きまくる(弾きまくる)という貪欲な時季を過ごします。人生で一番ギターを弾いていたのはこの頃かも知れません。
やがて社会人になってバンド活動から遠ざかると、自宅で夜な夜なギターを爪弾くのが中心になりました。ブルースやラグタイムを弾くのに憧れだったギブソンのL-00を買って、その後20余年僕の傍に鎮座しております。妻が掃除機をぶつけネックが折れ、ブリッジが剥がれ、クラックが入り今や満身創痍の御大ですが、それがかえってビンテージのような貫禄をつけて乾いた音色を響かせてくれます。
しかしこうして長年ギターを弾き続けているのに今ひとつ上手くならないのは、何故なのか?才能が無いのか、努力が足りないのか、、、それともあの伝説の十字路で悪魔に魂を売り渡していないからなのか。。。
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