2005年1月24日
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「マーチンなんて知らなかったのだ!」
 
(稲荷餡/42歳/千葉)
 


今は昔。兄からギターを借りて弾いていた。中3になってから自分だけのギターが欲しくなった。当時私が愛読していたマンガ雑誌には本物のマーチンやギブソンの広告はなかった。あたりまえだ。私の知っているギターは、CMで知ったモーリスと通販広告ページで見かける「鳥やら植物やらがピックガードに描かれた安物」程度だった。GIBSONも知らなかったのでニセGIBSONなんてことは当然知る由もなく、「お〜カッコイイ」と思っていた。

高校の入学祝いにギターを買ってもらうことになった。応援団のメンバーのほとんどはこういう局面で「マーチンなんかとんでもない」となったはず。そう、「いつかはマーチン」のスタート地点。私は違う。その時点ではマーチンを知らなかった。

近所の楽器屋で当時「カントリーギター」と呼ばれていたDタイプを4万円弱で買った。貝細工がボディの周りをぐるりと廻り、ネックのインレイも四角くて大きくてカッコいい。ヘッドにWESTONEの文字。(ウェストン?ウェスタン?なんて読むんだ!)
今はなき「マツモク社」のW−40と知ったのすら数年後。

高校でフォークソング部に入部。3年間在籍していれば少しは見聞が広まってマーチンに憧れを持つようになったかもしれない。休日に行われた他校との練習会を友人4〜5名とサボったら、全員まとめてクビにされてしまった。在籍9ヶ月。
その後エレキに走ってバンドを組み、大学に入ってからはサークルに夢中になりアコギと疎遠になっていった。マーチンとの接点はこれっぽっちもなかった。

昨年の1月頃、ふとギターを弾きたくなった。実家で眠っているW−40のハードケースを20年ぶりに開けた。弦が張ってあった。ネックが反っていた・・・。レンチでキコキコしたら直った。いい音がする。すごくいい音がする。昔よりも音がでかくなったようだ。

エイ出版から出ている「マーチンD−28の伝説」という文庫本を買った。当然「マーチン・・・あぁそんなギターメーカーがあったな」程度の認識。マーチンに興味が出てきて、同じくエイ出版「僕のマーチン君」を買った。著者のマーチンに対する思いが伝わってくる。ものすごく傾いてきた。

聖地御茶ノ水を巡った。K澤楽器本店にも行って試奏した。プリウォーも弾いた。マーチン病に取り憑かれた。私の場合は「最近憧れるようになったマーチン」だ。

半年後、我が家に「D−28GE(中古)」が4年ローンを抱えてやってきた。
WESTONEは娘の練習用に活躍している。(「22歳の別れ」のイントロを教えている。)悔しいことに値段が数十倍違うくせに音のでかさではいい勝負だ。


 
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