2006年2月26日
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「幸せとは成長すること」
 
(S・ギャンブラー/49歳/埼玉)



子育てで発見したことは、「子供にとって幸せとは、成長すること自体にある」ということ。小学生の次男が少年野球に熱中している。先週より、上手に打てた時、守れた時、心から嬉しそうな顔をする。そして、来週にはもっと上手になるために、練習に集中する。飽くことなく、屈することなく、練習を続ける。親から見て、決して一流選手にはなれそうもないにもかかわらず。

野球に限らず、できなかったことが「できた」とき、分からなかったことが「分かった」とき、子供は幸せそうな笑顔を見せる。その表情は、一流になることが幸せなのではなく、自分が成長することが幸せなのだと私に語りかけてくる。レベルに関係なく、成長することが子供にとっての幸せなのだと気づく。齢を重ねるにつれ、そのことを見失う。本当は、年齢にも、レベルにも関係なく成長することが、人にとっての幸せなのだろう。 だから、他者と比較することはあまり意味がない。

昨夏、中学生の長女がスピッツのチェリーを歌いたいというので、久しぶりに、本当に久しぶりにギターを取り出し、タンタンタン・スターンタタンタンと8ビートを刻む。伴奏で歌をリードすると、長女の歌がいい感じに変わる。私もいつしか、長女の歌声とひとつになって伴奏に没頭する。ああこんなに楽しいことがあったことを忘れていた。早速、スピッツのシングルヒットを集めたアルバム(Recycle)を購入した。

1曲ずつ練習した。・・・楽しい!でも、細く小さな声しか出ない。WEBでボイストレーニングのHPを検索し、呼吸法、発声法を学ぶ。喉を締め付けてはいけない、身体全体で声を出すのだと知る。ボイストレーニングを少しづつ続けると・・・少し大きな声が出るようになった。WEBで歌い方のHPを検索し、自分のKEYで歌うことが大事だと知る。自分の歌いやすいKEYを見つける。スピッツの歌なら、カポを4フレットにはめれば、 よいことが分かる。夏川りみの「涙そうそう」はノンカポで、森山直太郎の「さくら」は3フレットで。その調子で、サザン・陽水・ユーミンなども、自分のKEYで気持ちよく歌えるようになった。50歳目前の私でも、歌が上手になると幸せを感じる。レベルは関係ない。年齢も関係ない。他者との比較も意味がない。 

40歳を過ぎたころから、自分で限界を設定し、可能性を自ら封印し、高望みせずに、リスクのない安全圏に逃げ込もうとしていた。とたんに、生きることが苦しく、仕事もつまらないものになった。それでも、人生なんてこんなものだろうと思い込もうとした。そして、私の成長は止った。目に映るものすべてが色を失い、生きる意味さえ分からなくなった。

卒業とともに止めた弾き語りを、再開し、気持が生き返ったようだ。ギターも歌も仕事も、努力すれば、まだまだ成長できる。成長の過程にこそ幸せがあるのだ、と私は思う。

 
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