2008年7月15日
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「ワタシの青春と言える頃」
 
(万寿庵/1959年生/奈良)


 ワタシの青春と言える頃、時は所謂ところのフォークギターブームの最盛期でした。その頃、ギターブームに乗ってあらゆる情報誌が出版されたのも、この頃でした。情報誌の記事が、すべてがすべてとは言わないものの、中にはいい加減なエセ情報も混じっていたのは、周知の事実です。

 その、おそらくは少数派であろうと思われる、無責任な編集者による、いい加減な内容で出版された情報誌が、その後の後継者たちに、どのような影響を及ぼす事になるかは、その記者本人も想像だにしなかったのではないでしょうか。そのエセ情報の最たるものは、「ギターはレギュラーチューニングをしたままが自然の状態であるから、保管するときもチューニングしたままで保管しましょう」と言うものです。

 そんな前置きをしながら、ワタシのアホな体験をお話する事にしましょう。
まだまだうら若きワタシが長年マーティンギターに恋焦がれ、ようやく手に入れたのが、マーティン社創立150周年記念で発売された、D−21カスタム限定版でした。しかも、それはヤマハの営業員が個人的に持っていたのですが、諸事情により涙を呑んで手放さなければならない、曰く付きのものでした。売値が12万円ですよ!そりゃ買いますがな!ブルーグラスファンのワタシにとっては、狂喜乱舞モノの買い物です。

 ワタシはそのギターをメインギターにして、どこのイベントへ行くにも一緒でした。そんなワタシにちょっとした不幸が訪れたのは、D−21を手に入れて、半年ほども経ったころだったでしょうか。ある時ワタシの大事なD−21を見てみると、トップが異様に大きく膨らんでいるのです。

 ワタシはその頃、愛媛県松山市の実家に住んでいたので、近くの東予市にアトリエを持つ、シーガルギターの塩崎氏に相談したところ、「弦を張ったままでギターを保管したら、そりゃトップも膨らむやろ!考えてもみてみ、弦を張った状態、特にライトゲージならトップとネックにかかる負荷は60kg、ミディアムなら80sやで、そんな負荷をずっとかけ続けて平気な木工製品て、あると思うか?ギターというものは、無理を承知で造られたものなんや、アタリマエの話やけど、よく鳴るギターほどトップはヤワやからな、保管の時、弦はテンション無くなるまで緩めなアカンよ!」とのご意見でした。

 改めて聞いてみたら、なるほどのご意見だと思います。ワタシはマーティンD−21カスタム限定版という実験材料を元に、じつにアホな実験をしてしまいました。弦を張りっぱなしで保管している方々!ネックの反りなどは修正が利くからまだマシなのです。問題はトップなのです。

 1音下げて保管するなどと言う方々も含めて、あなたのギターは大丈夫ですか?弦を張りっぱなしにしておくと、その張力は、ギターの表面板(トップ)を持ち上げてしまうほどの力があります。再度言いますが、ギターはいつでも張力が完全になくなるまで緩めて保管しましょう。

 こんな事を言うと、必ずどこかから「突っ込み」が入るのが常です。そんな方々、あなたのアコースティックギターのブリッジの下あたりが膨れていないか、確認してみてください。確認方法は簡単です、手でさわればいいのです。 どうですか?ブリッジの下あたりが膨れていませんか?「それはそれで大いに結構」と言う方は、それで結構ですが、気になる人は気になるでしょう。多くのギターコレクターやバイヤーの間では、トップが膨れた所謂ボテバラ妊娠ギターはどうしても評価が下がりますからね。

 それでも何だか意に添いかねるという方に、ワタシなりの情報です。ギターを弾いた後に、一々弦を緩めて、次に弾く時にチューニングが面倒だと言う方々!ワインダーを御求めください。6弦ともワインダーでおよそ5回転緩めたところで、弦に張力が無くなります。また次にチューニングしてギターを弾く時に、再びワインダーで5回転締めてやってください。元に戻らなくとも、いい加減なところまで戻ります。それから微調整でチューニングすればいいのです。

 ワインダー自体、良い評判を聞かないと言う方々は、それは認識不足というものです。ワインダーの使い方には、上手下手があるのです。ワインダーを回すとき、ギターの各所に当てることなくウマくまわせば、ギターを傷めることなく使う事ができます。ちょっとした経験で、誰でも必ずできます。

 次々に弦を張ったり緩めたりしていると、弦の劣化が激しいというのも正解です。しかし弦というもの、どんな高価なモノでも、どこまで行っても消耗品です。弦の劣化とギターのトップの変形とを取り替えますか?弦が劣化したら取り替えましょう。

 弦を張る、緩めるを繰り返すうちには、時にはまだ新しい弦が切れたりもします。さすがにその時は、弦を全部取り替えるのはもったいない話ですね。そんな時は、あらかじめ新しいバラ弦を多数用意しておいてください。いつも切れる弦はどのギターもほとんど1弦3弦と決まっています。本番の時ならいざ知らず、普段練習のときなら、違うメーカーの弦が混ざってもそれほど影響はありません。どうか実践してみてください。

 戦うオヤジの応援団の皆様!どうかここまで偉そうなことを並べたワタシをお許しください。ただただ皆様のギターライフのお役に立てればと思い、発言させていただきました。

あしからず。





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