2004年7月13日
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「最近のご主人さま」
 
(モブ/もうすぐ47歳/神奈川)
 

何を好んでこの私をおめし抱えになったのかわからないけれど、
2003年にここの家に来た。
楽器店のギター・スタンドに立てかけてあった私をしげしげと眺め、
「これ試奏していいですか?」と店員さんに話しかけた。

前のご主人様が何かの事情で私をこの楽器屋さんに置いていき、
それからずっとここにいた。
時折、今日みたいに「試奏」という名で弾かれることがあった。
この方が私を弾き倒そうとしているのではないかと、
その時おぼろげに思った。

その方は店員さんと話を付けたらしく、
宅急便という今時の荷馬車(?)で、私は今のご主人様の家に来た。

そのあと、「調整」と言う名の入院をした。
そこのお医者様は私のことをよくわかっているようで、
ちょっと疲れていた私を元気にしてくれた。

当のご主人様は、嬉しくて始めガシガシと弾いていて、
デリカシーもなにもあったものじゃなかったのだけれど、
そのうち、なんだか力も抜けて落ち着いてきた。

私が楽器の扱い方について教えてあげているのをご主人様はご存じない。
誰かに教えられるのではなく気づくことが大切なんだということを、
わかって欲しいと私は思っている・・・。

最近、ご主人様は、20年くらい前に買った様な古い曲集を相手に私と遊んでいる。
私も時には外に遊びに行きたいと思う今日この頃だけれど...。

時折、調子を変えて弾くことがあって、
そう言うときはどうしてもうまくいかないみたい・・・。
でも、私がここの家に来たときから比べれば少しはいい感じになったかもね・・・。

「極楽快適マーチン生活」などと、今のご主人様には、
自分で自分の好きなことをしていくことの「楽しさ」を味わって欲しいと思います。

(D−18「いっぱち」談)
 
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