2004年7月16日
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「もう23年、まだまだ23年」
 
(Acoustic/39歳/熊本)
 


高校2年の春、私は突然ギターを弾きはじめた。

それまで、私は一度も「クラブ活動」なるものに参加したことがなかった。漠然とあこがれていたギターであったが、友人が「何もしていないなら、俺の入っている音楽部に入らないか」と誘ってくれたのである。参加するには、ギターが必須であった。 

私にはギターがない。そうしたら、クラブの先輩が「新しいギターを入手したので、古いものを譲ってやろう」と言ってくれた。価格は一万円。クラブ活動ごときに金などかかるはずがないと思っていたらしいケチな両親は、この金額に仰天したが、しぶしぶ出してくれた。 

今でも憶えている。初めてのギターは、モーリスのWH-30。番号通り、三万円が定価である。ボディは全て合板のギターだったが、ギブソンのコピーモデルで、確かに音が似ていた。現在は知り合いのお父上にお譲りしたので、手元にはない。このギターで、何でも弾いて唄った。アニメソングまで唄ったくらいである。 

高校を卒業して就職したが、その初任給で、ヤマハのFG-400Dとハードケースを買った。これは現在も手元にある。当時のFGシリーズの最高機種で、トップはえぞ松の単板。糸巻きが金色で美しかった。 

事情があって、自衛隊に入隊した。四年いたが、その間一度もギターにはさわらなかった。その後地元の会社に入社して、再びギターを弾きはじめた。 

ある日、新しく出来た大手楽器店に行った。当然ギターを見に行ったのだが、マーティン、ギブソンはあっても、ギルドがない。どうしたものかと聞いたら、「試奏してみませんか。取り寄せることが出来ますよ」と店員が言うので、取ってもらったのが、現在所有しているD-25である。

映画「ウッドストック」の冒頭で、リッチー・ヘヴンスがかき鳴らしているギターの、下位機種ではあるけれど、全く同じ鳴りをしている。しばらくは店頭に飾られていたが、結局私が購入した。初の舶来物である。

そのローンが終ったとたんに購入したのが、マーティンD-28。ヤマハやギルドとは、全く別の音がした。ちょっとトップに傷を入れてしまったが、大切な宝物である。 

初めてのギターから、もう23年たってしまった。趣味と仕事一筋で、嫁さんもいないし貯金もないけど、私は大いに幸せである。まだまだ弾き続けますよ。
 
 
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