2004年8月5日
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「50を過ぎても女にもてたい中年男」
 
(hanson/51歳/東京)
 

私がギターという楽器に出会ったのは、私が9歳か10歳のころ、父親がギター片手に「古賀政男」メロディーを歌っていたころまで遡ります。
子供心の好奇心だったのでしょう、壁に立てかけてあったギターを手に取り、六本の弦を「ジャジャーン」これが、私がギターと言う楽器に生まれて始めて触れた瞬間です。

解放弦で弾かれた弦は、ダラダラダーンという「音」を発しただけでした。
親父をまねて左指で弦を押さえたところで、音などでるはずもなく、ある日、私の必死にもがく姿を見たのでしょう、親父が、「おまえギター習いたいか?」
その一言がギターと私をつなぐ40年の歴史の始まりでした。

私も言われるままに「うん」と一つ返事で答えたのはよかったのですが、当時、少年がギターを弾くなど私の周りには皆無に等しかったので、「ギター教室」なる所に通い始めた時も、生徒さんは皆大人ばかり、先生からは「坊や今から始めれば必ずうまくなるから、続けるんだぞ」と言われた言葉は今も覚えています。

しかし、教室で順番を待っている時も、その後、ある程度進歩してからの発表会でも、子供の演奏者はとにもかくにも私一人ですから、奇異の目線を常に感じながらのギター練習が続きました。
そんなわけで、私のギター遍歴はクラシックが基礎となっています。

そのうち、中学生になったころ、例のベンチャーズサウンドが日本中に響き渡りました。放課後、クラスの男子らも、クラシックギターでパイプラインやダイヤモンドヘッドのイントロを得意げに弾き、女子生徒から「キャーッ、かっこいい」と、それこそ輪ができちゃうほど、ギター弾ける子は、モテちゃったんです。

それまでクラシックの世界しか知らなかった私にとって、ベンチャーズサウンドはとても新鮮に響きました。
一応中学生の頃には、ギターの基礎的なテクニックと音を取る訓練はできていましたので、ベンチャーズのリードギターをコピーすることは、さほど難しい作業ではなく、友人の家で、「ベンチャーズってこんな感じだろ」って弾いてみせると「おまえ、なんでそんなにうまいんだ?」、それが口コミで評判?になり、ある日、学校の音楽の授業で、先生が「・・君、君ギターうまいんだって、弾いてみてよ」と言われ、教室になぜか置いてあったギター、今でも不明なんですが、とにかく、クラシックギターを手渡され、いざ、お披露目となりました。

それまで発表会など何度か大勢の前で弾く事は経験していましたので、いきなりギターを渡されても、あわてることはなく、まずは、簡単なスケールを弾きました、それだけで「うぉーっ」という声があがります、次にクラシック風の「蝶々」「さくらさくら」など、一応音楽の授業にふさわしい?短曲を2、3曲弾いた後、いよいよベンチャーズです、
ダイアモンドヘッドをベンチャーズ風に最後まで弾いちゃった時は、女子から「キャーッ、・・君!!かっこいい」の黄色い声が教室中に響きました、そして最後は定番中の定番、「禁じられた遊び」です。
その日から、私は女の子(男の子ももちろんいましたが)から、弾いて、聞かせて、教えてのクラス人気者となり、とりわけイケ面でもない私が人生で唯一女の子にもてた気分を味わうことができた、つかの間の幸せでした。

しかし、流行というのは無情、非情なもの、
ベンチャーズやグループサウンズなどリードギターで聞かせる音楽は私が高校のころには、すっかり過去のものとなり、世は、いつのまにか反戦フォークの時代が到来していました。

ギターもピックやツーフィンガー、スリーフィンガーというフォーク独特の奏法が主流となり、「ジャンジャカ、ジャンジャカ」とピックでコードを弾いたり、弾むような音色のフィンガーピッキンで、反戦歌を歌い、ヘルメットかぶって角棒でデモ行進の時代へと突入しました。

私はギターは本来、指で弾くものとの強い信念がありましたが、時代の流れに勝てるはずもなく、私もいつの間にか、仲間と公園で反戦歌を歌い、「ジャンジャカ」演奏で「戦争を知らない子供たちや」フィンガーで「遠い世界へ」などの、皆さんご存知の曲に没頭して行きました。

女の子にモテた幸せな中学生時代から、ギターで世の中を変えようと(喜納昌吉)さんじゃないですけど、本気で若者や大人たちにメッセージをつたえようと、叫び続けました。

あれから40年、思えば、ギターを弾けば女の子にモテる世界とはあまりにもかけ離れた人生を歩み、今、鏡に映る自分を見て、よくも禿げたもんだこの頭、「あのときの俺を返してくれ」、戦争はもちろん反対だが、それよりもモテたはずだった、あの日にかえりたい。

親父のギターがきっかけで、ギターという楽器に出会い、ギターのおかげで、女の子にも持てた勘違いを瞬間的に経験し、ギターの力で世の中を変えられると、本気で反戦を叫び、やがて結婚し、子供ができて、今はすっかり「日和見」人間です。50代の皆さんにはなつかしい響きでしょう?この言葉。

でも、ギターはこの40年間、いつも自分を支えて来てくれました。
仕事でつらいことがあれば、家に帰りウィスキー飲みながら、夜遅くまで、サイレントギターでしみじみ弦を弾き。
また、二人の娘、親に影響されたかは不明ですが、ピアノとバイオリンを弾きますので、たまに3人でセッションをやります。
最近は、マーチンのグラプトンモデルをゲットし、ブルースの奥深い人生へのメッセージにハマッております。

そして今、私が挑んでいるのは、女の子を口説くときの究極のコード進行を見つける事です。ギター弾きは女にモテる、こんな幻想に、禿げた親父は今日もむなしいチャレンジを続ける悲しきムスターシャってところでしょうか。

もしみなさんが、これぞ女を口説く究極のコード進行だと、思われる方は、ぜひご教授ください、大歓迎です。女の子から「このおじさんギターうまいじゃん」これが最高の快感ですね。

これからも皆さんのギターへの熱い思いを励みに、戦うオヤジは今日もさすらいの道を歩み続けます。

ありがとうございました。


 
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