「みなさん、よろしく」
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(いっしゃん/1968年生/徳島) |
今から20年もまえのこと。
剣道部の同級生だったマツザキくんの結婚式にお呼ばれしたぼくは、
前日、とつぜん、お祝いソングのリクエストをされました。
福島から一路東京に向う車のなか、吉田拓郎の結婚しようよを延々とリピートしながら、五時間かけて高輪プリンスにたどりついて、どきどきしながらマイクの前に立ち、でもまだその時点では、どうせ結婚式やし、誰も聞いてないだろうと余裕があったのですが、新郎のマツザキくんは警察官だったので、お堅い空気のなか、みんなが重々しくおごそかにこっちを見守っているという事態にぼくは青ざめ、案の定歌いだしで思いっきりハズしてしまいました。そのとき、新婦の横にいた仲人のおばちゃん(かなりおえらいさんのおくさん)が、「ちょっとひどくない?」と新婦に耳打ちするのがハッキリ聞こえ、ぼくはパニックに陥ってしまいました。会場は、失笑と、なにやら気の毒な雰囲気で、それにつれてますますぼくの歌は収拾がつかなくなり、もはや拓郎というより、民謡とか浪曲のようで。
そのときマツザキくんが、檀上に手まねきしてくれ、やおらマイクを奪い取ると自ら歌ってくれたのです。その間、ぼくは彼の横でぼうぜんと直立不動のまんま。もちろん彼が歌いおわるまで。
思えば、中学生のころからその傾向はありました。ちょっとしたクラスでの歌の練習のとき、先生がピアノをとめ、「誰かが乱している。」
ひとりひとりにパートを歌わせると、「やっぱり君かあ。わるいけど、本番ではクチぱくしてね。」なんてことまであり、家に帰って憤慨していると、おふくろが「わたしもそれ言われた。」
まあ、気分のいいときひとりうたう鼻歌でも、あまりのひどさに自分でふきだすぐらいだから無理もないけど。
そんなころ、ギターに出会いました。当時家にさだまさしのカセットテープがあって、妙にひかれて。近所の電気屋とレコード屋が一緒になったような小さな店で、モラレスとかいうのを二万円で買いました。
ソノシートつきの雑誌で練習したりしたけど、まったく音楽にならないし、コピーが上達の近道、なんていわれても、ベース音を先にとってどうたらこうたら・・・、キーはその曲の一番落ち着くところで
なんたらかんたら・・・、ああ、音楽ってほんとセンスが必要なんだなって当時はがっくりしてました。
あれから年月がすぎ、ぼくのモーリスにもあちこちに経年変化やウェザーチェックが入りはじめ、音楽の趣味も変わってきました。
クラプトンのアンプラグドに驚き、それがきっかけでTABギタースクールの教材に出会い、才能のなさにガッカリし、また別の素敵な音楽をみつけて感動し、応援団のみなさんと出会うことができました。
いい意味でも悪い意味でも、ぼくはギターと、つかずはなれず、中途半端につきあってきました。これからもそうだろうと思います。ただ、これからは分かち合える仲間がほしい。
芦原すなおさんってひとが書いた、「青春デンデケデケデケ」って小説があるんですよ。これは大林宣彦さんが監督で映画にもなってるんですが、ぼくはいつもうらやましく読み返してるんです。
香川県観音寺の高校生がラジオから流れるベンチャーズに衝撃をうけて、仲間とバンドをはじめて成長していくという物語なんですが、やっぱり音楽とかギターとかって友達とか仲間がいたほうが面白いですよね?喜びも倍増っていうか。ハッピーになれますよ、ひとり音痴でもんもんとしてるより。というわけで、これからぼくのギター人生の第二ステージは、仲間をつくってみんなで楽しむ!
んでもって、人前で歌う!をテーマに今年はがんばりたいとおもいます。みなさん、よろしくお願いします。
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