2008年7月29日
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「ガンコ」
 
(Tokkuri/1946年生/東京)


 「ガンコ」、つまり頭が固い。ボケの始まりとも言われている。何故そうなったのかはわからないが、人から言われて気が付いた。私は子供の頃聴いた三味線と能謡いしか音楽を知らない。歌もある一点を除いて知らない。カラオケでも全然役に立たない。知っているのは、アメリカンフォークソングだけだ。その前も知らなければ、その後も知らない。殆ど歌えない。その前とはハワイヤンやジャズ、日劇ロカビリー、その後とは、和製の4畳半、グループサウンズだと記憶している。ビートルズは年代的に並行していたかもしれない。勿論巷に音が流れていたので、メロディーを思い出すことができる曲は多い。

 ‘60年代のアメリカンフォークソング、トラディショナルとモダンフォークソングにはまってしまったのは18歳の頃。ブラフォーやPPM、キングストン、イアンとシルビアなど必死にコピーし練習した。大学でバンドを組んでからは、渋谷児童会館、ヤマハホールではプライベートコンサートを開催したり日比谷音楽堂やバイタリスフォークビレッジなどにも出演した。ところが、我々バンドの曲は、所謂一般受けするような有名曲ではなく、何故か知られていないフォークグループを真似していて、もてないこと甚だしい。当時、ブロードサイドフォーなどは、ブラフォーより甘く美しく歌っていて、もてること何の!! それに引き換え、我々のターゲットグループは「Wayfarers」「Limelighters」「Chad mitchell Trio」「MFQ」などで、今で言うオタクバンドだったに違いない。

 何故そうなったか。バンドを結成して間もなくのあるコンサートで、どのグループも決まったようにブラフォーやPPM、キングストンを歌っていたが、突然、仰天と感激、鳥肌と涙を誘ってくれたバンドがあった。「キャスターズ」という名前のグループは、川口の鋳物工場の人達だった。当時のフォークグループの双璧は(私の勝手な意見ですが)キングストントリオのカバーの「ニューフロンティアーズ」、PPMのカバーの「PPMフォロアーズ」と思っていたが、「キャスターズ」をそれに加えたい。「Wayfarers」の曲を歌い、場慣れこそしていないが迫力と真摯な取り組み、独特なハーモニーは今でも脳裏に焼きついている。

 どうも、それ以来ガンコになったようだ。

 バンドを解散してから、足掛け40年後、また同じことをやり始めた。同じメンバーと、同じような歌を。変わったのはギターで、昔はヤマハFG150ライトグリーンラベル、今は、マーチンにした。きっとこれからもガンコに同じような曲を、昔のレコードをCD化して聞きながら、練習に励むことになりそうだ。




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