「空とまりあの音楽と」 |
|
(安部まりあ/1958年生/東京) |
2008年の春。まりあは、懐かしい名曲の調べに誘われて、気がつくと石川県金沢市にいました。
青く澄み渡る兼六園の桜がとても奇麗でした。
まりあは、少し暗い顔している?堅い仕事をしていて、孤独な立場でした。プライベートでも、なかなか人の輪に入り込めない内気なまりあです。
でも、あの日、紛れもなく、まりあはそこに居て、音楽を心から楽しんでいました。
音楽を楽しんでいただけのまりあは、仮説もなければエビデンスもない強くて不思議な力に包まれた瞬間、何かが夜空へ突き飛ばされたような衝撃を覚えています。
それを境に、毎日のメロディーコール。まりあは、乾いた日常に音楽という潤いがあってもいいかなと、空を見上げるたびに思うようになりました。
幼い頃から、母が弾くオルガンの音が大好きでした。そして、父が吹くトランペットの音も大好きでした。
祖母は、お琴の先生で祖母が奏でる旋律も大好きでした。
父の仕事の関係で、転勤族でしたが中学時代は、吹奏楽を楽しみフルートを担当していました。そんなまりあが、ギターを始めて手にしたのは、中学1年生の冬。音楽の授業でした。クラシックギターのナイロン弦は、お琴とは違う魅惑の音色でした。
中学2年生になる春に、奄美大島に転勤になりました。その当時は、テレビもNHKのみしか放送がなく、友達もいない春休み。そんな日常にラジオから流れてきた曲。Don't Think Twice, It's All Right。もう、ギターの音色とディランの声に魅了されました。クラシックが中心だったまりあの音楽にフォークが加わった瞬間でした。
幼い頃から、持病のために運動することに制限があり、読書や音楽が中心の生活でした。
両親にわがままを言って、フォークギターを買ってもらいました。それから、中学の音楽の先生に教えてもらいながら、譜面をおこし一生懸命練習しました。
高校は私立の女子校で、クリスチャン系の厳しい高校でしたが、ギター同好会を作り高校2年生の時に部活に承認してもらったことも懐かしい思い出です。
高校卒業後は、専門学校に進学し授業や実習などの関係で、ギターからは離れてしまいました。フルートは、21歳の夏まで吹いていました。
2008年の夏、中学生時代に買ってもらった、フルートをメンテナンスに出しました。
30年もの間、捨てることさえ出来ずにいたフルートを。そして、過密スケジュールなまりあの生活に音が響き始めました。
タッキング、ロングトーン。ブレスひとつで音色が変わる繊細なフルートです。
空のもと、奏でるギターとフルートの協奏曲。とても優しい音色です。
まりあの生活に音楽が戻ってきました。
大人になって、いつしか心が閉ざされ、すっかり忘れていた優しい調べ。
2011年の春。
まりあは、MARTINの白いギターを手にしています。
毎年のように、身の回りでは小さな事件が起こり、それでも自分の心を信じ、様々な音を楽しんでいます。声、音の響き、のり、その時々で違うことを楽しんでいます。
まりあの部屋にある、地球儀を見て思います。
この、丸い地球でも毎年のように、どこかの国で大きな災害が起きています。そして、多くの尊い命が自然の猛威のもとに消えてしまう現実があります。
まりあの妹は、1993.8.1水害でライフラインが断たれた街に暮らしていて、1ヶ月後の9月13日に突然、過労死しました。33歳の若さでした。
2011.3.11の東日本大震災は、悲しい過去を思い出しました。今もなお、大変な日々が続いている被災地を思うと心が痛みます。
2011年5月8日。石川鷹彦さんのコンサートに出かけました。
そこには、老若男女、音楽を愛する人達がたくさんいました。
ギターの神様と言われている、石川鷹彦さんが奏でるギターの音色。きっと、時空を超えて被災地のみならず、人々の心に届いていることと思います。
今のまりあは、ギターを片手にコードFと悪戦苦闘しています。こうして、PCのキーボードを叩く左手の指先が硬くなっていることに気付きます。
そして、魂の詩人と言われている、坂村真民さんの詩が脳裏に浮かんできました。
「鳥はとばねばならぬ」
鳥はとばねばならぬ 人は生きねばならぬ
怒涛の海を
飛びゆく鳥のように
混沌の世を生きねばならぬ
鳥は本能的に 暗黒を突破すれば
光明の島に着くことを知っている
そのように 人も 一寸先は闇ではなく
光であることを知らねばならぬ
新しい年を迎えた日の朝
わたしに与えられた命題
鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ
野球を観ながらでも、生きている限りギターを弾いていたいとお話しされた、石川鷹彦さん。とても有意義な時間をいただきました。楽しい仲間の輪に入りたいと願うまりあです。
早くに事務局からのお便りを頂きながら、返信が遅くなり申し訳ございませんでした。
音楽は、心の潤いですね。様々な感情を共感できます。そして、勇気づけられますね。
感謝いたします。 |
|
|