2011年8月17日
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「ギターの想い出」
 
(toko-toko/1963年生/埼玉)


フォークギターを始めたのは中学2年生の時だった。
その頃は「アコースティックギター」という言い方はあまりしていなかったように思う。
エレキギターに対して生(なま)ギターと言ったりもしていた。
この頃は「アコースティックギター」を省略して「アコギ」とも言うようだが、どうにもなじめない。
「あこぎ」とは「あこぎな商売」とか悪いイメージの言葉なのであり、何でも省略すればいいというものではない。

中学生から高校生までよく弾き語りをしていたのは、「かぐや姫」や「風」、「サイモン&ガーファンクル」など。
「サイモン&ガーファンクル」は英語の歌詞を少しでも本物に近づけられるように自己流でずいぶんと練習したものだった。

大学進学のために上京してからはギターに触れることはほとんどなくなった。
ふたたびギターを弾くようになったのは39才の夏だった。
独身、離婚歴一回、母親との二人暮らしとなっていた。
14年間勤めた会社を辞め、失業給付が7ヶ月出ることを知り、それならばと7ヶ月間は働かないことにした。

初めてパソコンを購入し、再就職に役立つとも思えないがパソコン教室にも3ヶ月通った。
39才にして初めて自動車教習所に通い運転免許も取得した。
デジカメを購入しブログも始めた。
今思えばなかなかに充実した失業期間ではあった。

ブログは2年ほど続けたがブログ自体がなくなった。
ブログに音楽ファイルを添付できることを知り、自分のギター弾き語りを聞いてもらおうと思いギターとの付き合いが再び始まった。

MTR(マルチトラックレコーダー)という録音機材があるのをその時に知った。
カセットテープレコーダーしか知らなかった私だが、さっそく4トラックのMTRを購入した。
1トラックにギターでコードストローク、2トラックにスリーフィンガー、3トラックにメインのボーカル、4トラックにハーモニーのパートを多重録音した。
曲はサイモン&ガーファンクルの「水曜の朝、午前3時」
その出来栄えは、素人が一所懸命演奏して歌っているというだけのものだったが、一人で多重録音で1曲完成できたことがうれしかった。
「マイサウンド」という音楽投稿ウェブサイトがあり公開してはサイトの友人とコメントのやり取りをした。

7か月の失業期間が過ぎ、知り合いの紹介で以前と同じ業種の会社に再就職すことができた。
そして休日を使った多重録音の楽しみは更に深まった。
MTRは32トラックを購入し、マイクやシンセサイザー、エレキギター、エレキベース、ギルド12弦ギター、マーチンのギター、マンドリン、エレアコベースギターなどなど楽器と機材はどんどん増えていった。

去年の2月、夜11時、隣家の火災により自宅が全焼した。
幸いに自分と母親は早く逃げて無事だった。
愛猫の「ケメコ」は一時行方不明だったが、なぜか足を火傷して近隣の人に保護されていた。
隣町に住む妹のアパートに避難し、貸家を探し、家電製品やら衣服からとにかくすべてを買い、銀行や免許の再発行などで毎日走りまわった。
仕事は10日間休んで復帰した。

貸家の2階が私の部屋だがなんともシンプルな部屋である。
そしてやはりギターが欲しくなった。
その頃買ったのは、マーチンのポールサイモンシグネチャーモデルPS2というもの。
とてもいい感じの音がします。





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