2013年8月12日
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「心のスイッチを入れる時」
 
(JUN/1960年生/埼玉)


吉田拓郎マニアで、若い頃弾き語りみたいなことをしていました。田舎の少年だったので、まさに「みたいなこと」であり、ちゃんとギターが弾けたわけではありません。

きっかけは、父に買ってもらったガットギターでした。クリスマスと誕生日以外に何かを買ってもらうことなどない時代でしたので、夢のようにうれしかったことを覚えています。その後、アルバイトをしてフォークギターを買い、拓郎さんのコピーにのめり込んで行きました。しかし、いつしかそれも音楽を聞くだけになって行きました。

五年前に父が他界し、その直後にあのガットギターを引っ張り出しているうちに、もう一度ギターを弾いてみたいと思うようになりましたが、それを妻に話したら「音痴だから歌はやめた方がいい」と言われてしまいました。歌がだめならインストをやろうと思い、ギター教室に通い始めて、ソロギターの世界を知りました。

最初に僕が選んだギターは櫻井河野のガットギターです。温かく、かつ、芯のある音色がとても気に入っています。習い進むうちにスチール弦のギターの音も欲しくなってきて、お茶の水に通い、何十本も弾き比べました。

ある日、店の人に勧められてSUMIギターを弾いて、その音に心を動かされました。そして、鷲見さんにお会いし、その暖かい人柄にも惹かれ鷲見さんにギターを作ってもらうことになりました。僕のこだわりは、ガットギターから持ち替えたときに違和感のないネック幅の広さと、鷲見さんらしい音が出るギター。そして、大好きな岡崎倫典さんのSUMIギターをモデルにした桜のインレイ。四ヶ月後、ヘッドとネックに桜が咲いたギターが、思い描いた通りの音色で仕上がりました。

それなりの歳になり、公私ともに悩みが多いこの頃です。今、このギター達が僕の人生を支えています。相変わらず、ギターは上手くなりませんが、ギターを弾いている時間にいろいろなことをリセットでき、もう一度僕にスイッチが入ります。

鷲見ギターの愛好者の集まりで、この会を知りました。勇気を出して、近くのSP川口の練習会に出席しようと思っていた矢先、ちょっと体調を壊してしまいました。元気になったら、必ず参加します。その時はよろしくお願いします。




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