2013年7月25日
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「お父さんたちのギター」
 
(ジョニー/1960年生/神奈川)


 私には男の子が三人いる。高校三年生の長男と中学三年生の双子の兄弟である。幼い頃からエレクトーンを習い、音楽や絵画に関しては随分時間をかけて馴染ませてきたつもりなのだが、どういう訳かギターにはなかなか興味を示さなかった。

 ところが最近、双子の一人が急にバンドをやると言い出した。同級生で保育園の頃から一緒の近所の子がエレキベースを弾き始めたというのだ。双子のもう一人はドラムを習っているので、三人でやると言う。

 何でも始めるとなると、まず形から入る子供たちなので早速ギターを買うと言い出す始末。ここはしかしいつまで続くか分からない“マイブーム”なのだから、「お父さんのギターを使っていいから。」と、古いFGなどを引っ張りだして弦を張り替えてあげたりしているうちに、いつの間にかこっちが楽しくなってきてしまう。

 はじめはすぐに指が痛いと言い出していたのが、ひと月もするうちに“F”が何とか鳴るようになって、日曜ともなると近所の友達を集めては我が家の居間を貸しスタジオ状態にしてしまう。こちらもいい気になって手取り足取り教えていくうちに、一人二人と子供たちの仲間が集まってきて、皆「お父さんが押し入れの奥から出してくれた。」などと言ってはS.Yairiのフォークギターや、GRECOのレスポールなどを持ってきたりする。

 バンドでやる曲がきまり、エレキギターを貸してくれと言う。私の国産コピーもののストラトを出してあげたのだが、本人の好きなアーティストはテレキャスターを使っているらしく、WEBでいろいろ調べたりして〇〇の店では幾らで買えるなどとぶつぶつ言っている。そんな姿を見ているとインターネットなどなかった時代に、やっぱりカタログや雑誌を眺めながらあれやこれやとギター選びをしていた私の青春時代を思い出して、にやにやしてしまう。きっと自分がしたように、この子もお年玉とおこずかいを一本のギターにつぎ込んで、いつの間にか買ってくるんだろうなぁ。

 中学生くらいの子供たちの運動神経は素晴らしいもので、少し教えるだけでどんどん上手になっていく。こちらも負けている訳にはいかないので少し稽古の量を増やしていこう。

 この夏は久しぶりに仕事仲間とのライブも実現しそうだし、弦の消費量が増えるなぁなどと、ぶつぶつ言いつつも楽しい今日この頃なのである。

 
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